鳥の巣には、絶滅危惧種を含む多様な昆虫が生息していることが知られています。特にカワウのように集団で営巣するような鳥の巣では、巣を構成する植物の残骸、吐き戻しや糞、死骸、羽などが絶えずあるため、それらを利用する昆虫などが高密度で生息します。カワウのコロニーからは、アカマダラハナムグリなど絶滅危惧種を含む多様な昆虫が見つかっています。数が多く大きさも大きいカワウの巣やコロニーは、近年世界中で減少している飛翔性昆虫の発生源として役立っている可能性があります。昆虫が利用する鳥由来の有機物量は、営巣数や繁殖ステージ、営巣履歴などによって左右されます。しかし、それら鳥側の要因と昆虫類の種類や数の変化については研究が進んでいません。さらにカワウは人の生活との軋轢によってコロニーが除去されることがあり、昆虫の重要な生息地が認識されずに消失している可能性があります。 プロジェクトの目標
このプロジェクトでは、鳥類・昆虫・データ解析の専門家と、このページで募集する調査員が協力し、昆虫の生息地としてのコロニーのはたらきを定量的に評価することを目指します。具体的には、以下の3つの目標を立てています。 ● コロニーにどのような昆虫が生息しているかを明らかにし、リスト化する ● コロニーの有無が昆虫の多様性や希少な昆虫の生息状況に影響しているかを明らかにする ● 昆虫の多様度が高いコロニーや、希少な昆虫の生息に適したコロニーの特徴を明らかにする
主に東日本を中心に、調査地とするカワウのコロニーを選定すると同時に、コロニーにトラップを設置して昆虫の捕獲調査をする参加者を募集し、担当調査地を割り振ります。カワウの育雛期(東北 5–6月、関東3–7月)に、昆虫を捕獲するトラップとカワウの糞トラップの設置と回収を行います。★参加者にはオンラインで調査手法をレクチャーします。 カワウの営巣数、営巣履歴、コロニーの面積、営巣密度を算出し、昆虫の多様度や個体数、糞トラップから得られた結果を解析し、昆虫の多様度が高いコロニー、昆虫の個体数が多いコロニー、希少昆虫が生息するコロニーの特徴を解明しようと思います。 こちらのページで、参加者の募集を行っています
本多里奈 埼玉県立自然の博物館 学芸員 竹重志織 東北大学 半田宏伸 埼玉県立自然の博物館 学芸員 柿添翔太郎 国立科学博物館 標本資料センター 支援研究員 屋宜禎央 九州大学 農学研究院 助教 植村慎吾 バードリサーチ 研究員 このプロジェクトは、公益財団法人自然保護助成基金によるプロ・ナトゥーラ・ファンド助成を受けて実施します。