プロジェクト紹介

環境変化と野鳥


東京都の鳥類GIS解析


全国の鳥類分布状況の収集と分布状況の変化の原因についての解析をバードリサーチの研究の1つの大きな柱にしたいと考えています。その解析のモデルケースとして、1973~1978年、1993年~1998年に東京都により鳥類分布状況調査が行なわれていて、その当時の植生情報も完備されている東京をモデル地区として、現在さらなる分布情報の収集と解析を行なっています。
解析の結果、以下のようなことがわかってきました。

  1. 分布の増減






  2. 分布変動の原因


    ある鳥種が、その場所にいたか、いないかの情報とそこの植生情報をもとに、判別分析という手法を使って、ある鳥種の分布に影響する要因を調べています。そしてそれがその種の分布変化に影響しているかどうかについて調べています。



サシバの分布変動の原因

1970年代、サシバは22メッシュで記録されたのに対し、1990年代には2メッシュでしか記録されませんでした。1970年代のデータをもとに、サシバの生息に必要な環境をしらべたところ、樹林と水田が接している場所が長いことが最も重要で、続いて樹林の面積が広いこと、樹林と草原が接している場所が長いことが重要なことがわかった。1970年代から1990年代にかけて、水田の面積は、大きく減少し、サシバが生息していた地域の環境は大きく変化してしましました。この水田の減少に伴う樹林と水田が接した場所の減少が、サシバ急減の最大の要因と考えられます。


ヒバリの分布変動の原因

1970年代と1990年代を比較すると、見られなくなってしまったメッシュ(赤い丸)が150メッシュ、出現状況に変化のないメッシュ(黄色)が38メッシュ、新たに見られるようになったメッシュ(青)は28メッシュと急激に減少していました。



1970年代、90年代の分布状況と環境を比べたところ、ヒバリの生息のためには、畑、草原、水域が重要だということが明らかになりました。この傾向は両年代ともに同じでしたが、1970年代は畑への依存度が最も高く、1990年代は、依存度が最も低くなっていました。1990年代には畑の面積が急激に減少しており、その減少した地域は、ヒバリが減少した地域と一致していました。この畑の減少がヒバリの減少に大きく影響していると考えられます。


ツバメの分布変動


1970年代と1990年代を比較すると、見られなくなってしまったメッシュ(赤い丸)が53メッシュ、出現状況に変化のないメッシュ(黄色)が154メッシュ、新たに見られるようになったメッシュ(青)は19メッシュと都心では減少、山間部ではやや増加傾向が見られるものの、全体に大きな変化は認められませんでした。しかし、断片的に残されている過去のツバメの密度調査の結果をみると、ツバメは明らかに減少しています。



今回の分布データから判別分析で解析すると、市街地と畑地、水田と草地がツバメの分布に影響していることがわかりました。1970年代はこれらの環境要素で87%の分布が説明できましたが、1990年代は67%しか説明できず、この間に、環境要素では説明できない何かがツバメにおきているようです。この東京都の調査は、「いる・いない」のデータだけなので、密度の情報あるいは繁殖成功率の情報などをもとに解析をすすめれば、ツバメの減少の原因が明らかにできるかもしれません。今後はそのような調査をしていきたいと思っています。


1990年代の調査から10年が経ちましたので、鳥の分布状況の調査を今年からはじめました。調査に興味のある方の参加をお待ちしています。
までご連絡ください!