モニタリングサイト1000ガンカモ類調査交流会


 モニタリングサイト1000は環境省が実施している事業で、全国に約1000箇所の調査地を設置し、長期的なモニタリングによって生態系の変化を把握することを目的としています。そしてガンカモ類調査は、全国約80サイトの調査地で、現地調査を行う市民、事務局であるバードリサーチ、環境省の協働によって進められています。大分県では、大分市内にある「松岡敷戸のため池群」が調査地に指定されています。
 今年の調査交流会は日本野鳥の会大分県支部のご協力で、大分市に近い杵築市で開催します。各地で調査をしている皆さんから最新情報を紹介していただくほか、調査に興味がある方向けの研修会を行います。どなたでも参加していただけますので、ご興味がありましたら、ぜひお越し下さい。

日 時
2017年12月2日(土)
9:30~12:00 ガンカモ調査発表会
13:00~16:00 ガンカモ調査研修会
17:00~19:00 懇親会

発表会と研修会は参加費無料です。当日参加もできますが、準備の都合上、お申し込みいただけると助かります。懇親会は事前のお申し込みが必要です(11月27日(月)まで)。


会 場
きつき生涯学習館(大分県杵築市)
JR杵築駅から「国東行き」か「杵築バスターミナル行き」のバスに乗り、杵築バスターミナル(所要時間15分)で下車。南へ徒歩5分。

調査発表会プログラム(要旨は随時追加します)
■モニタリングサイト1000について

モニタリングサイト1000のについて(発表者未定 環境省生物多様性センター)
モニタリングサイト1000ガンカモ類調査について(NPO法人バードリサーチ)


■大分県のガンカモ類
ガンカモ類サイト「松岡・敷戸溜池群」の調査結果から かいま見えること 杉浦嘉雄(日本文理大学)
 「モニタリングサイト1000」で、九州唯一のガンカモ類サイト「松岡・敷戸の溜池群」は、大分市郊外にある18か所におよぶ溜池群の調査地である。このサイトは、かつて市内では珍しいオシドリの生息地として有名な場所であった。しかし、約20年前、その地域が総合開発【①都市公園(県立大分スポーツ公園総合競技場)、②商業施設(パークプレイス大分)、③住宅団地(パークプレイス大分公園通り)のほぼ同時開発】されることになったが、幸いにして、多くの溜池が残される結果となった。このサイトでは、2006年冬期の予備調査から2017年現在に至るまで、この開発地や周辺にある、何れも里山林に囲まれた溜池群に生息するガンカモ類の調査を継続的に実施してきた。今回の発表は、下記の項目のとおり、開発前の同地におけるガンカモデータおよび上記12年間のデータに基づいた調査結果である。
①「松岡・敷戸の溜池群」におけるカモ類の種数の経年変化  (1998年冬期~2017冬期)
②「松岡・敷戸の溜池群」におけるカモ類の総個体数の経年変化(1998年冬期~2017冬期)
③「松岡・敷戸の溜池群」におけるオシドリの個体数の経年変化(1998年冬期~2017冬期)
④総合開発の中心「笹尾池」におけるカモ類の総個体数の経年変化(1998年冬期~2017冬期)
⑤総合開発の中心「笹尾池」におけるオシドリの個体数の経年変化(1998年冬期~2017冬期)


都市近郊で豊かな自然が残る松岡・敷戸のため池群


大分県で見られるガンカモ類 江口初男(日本野鳥の会 大分県支部)
 大分県では1972年の日本野鳥の会大分県支部の発足以来、ガンカモ調査を実施しています。日田、玖珠地区以外は野鳥の会県支部の会員だけで、毎年1月の成人の日を中心に全県下一斉に調査し研究部でまとめています。今年の調査結果は31,661羽になっており、交流会が実施される杵築市ではツクシガモ87羽を始め3,557羽が記録されています。今期も年明けの本番に向けて調査の準備を進めています。発表内容は次の通りです。
① 大分県のガンカモの調査と記録
② 杵築市守江湾のガンカモの記録
③ 大分県で増えた野鳥、減った野鳥


杵築市のカモ類 左:海浜夢公園のカルガモ 右:天村川河口のヨシガモ



カウント数1万羽超えの衝撃!中津干潟に飛来するヨシガモ(和田太一 中津干潟シギ・チドリ類調査グループ・NPO法人南港ウェットランドグループ)
 大分県北部の中津市沿岸に広がる中津干潟は瀬戸内海で最大級の広大な干潟です。近年の調査で中津干潟では毎年ヨシガモが1,500~3,000羽前後越冬することが明らかとなってきており、国内における重要な大規模越冬地であることは間違いありません。また、秋の移動期に中津干潟に大きな群れが飛来することも記録しており、2015年11月22日には10,590羽をカウントするなど、中津干潟は渡り途中の重要な寄留地となっている可能性があります。ヨシガモは中津干潟に豊富に生える海草コアマモを主食としており、豊かな干潟の存在が国内最大級のヨシガモ越冬群を支えているのでしょう。


中津干潟とヨシガモの雄

全国のガンカモ類
宮崎県一ツ瀬川河口域の環境とガンカモ類(福島英樹 宮崎野生動物研究会)
 一ツ瀬川は、宮崎県の中央部を流れる総延長約90kmの二級河川です。河口域には浅瀬が広がり、干潮時には中洲干潟が形成されます。河口の左岸は漁港があり、河口から北側約3kmに及ぶ入り江になっています。また、右岸には二ツ立調整池があり、更にその周辺にはクルマエビ・ウナギなどの養殖池があります。この多様な水環境のある一ツ瀬川河口域は、秋になるとカモ類を中心に多くの冬鳥が集まる場所となっていいます。2006年10月から2017年5月までの調査で観察された鳥類は160種を超えます。また調査結果から、オナガガモ等の飛来数が急に増加していることや、カモの種類による渡りの時期の特徴等がわかってきました。


二ツ立調整池に集まったガンカモ類の群れ

滋賀県全域のガンカモ調査(植田潤 日本野鳥の会滋賀)
琵琶湖は周囲234kmの広大な湖です。その中に、毎年10万羽を超える水鳥が越冬に飛来します。滋賀県内の水鳥調査ということで日本野鳥の会滋賀で、水鳥調査を行っています。調査の結果から琵琶湖内でのガンカモ類の環境選択での分布の状況や、広大な水域での調査方法・実施時の工夫なども加え発表いたします。


琵琶湖 奥の州で見られるカモの群れ

ドローンを利用したガンカモ調査(神山和夫 バードリサーチ)
 湖沼が広くてガンカモ類が遠くにいたり、数千数万羽も飛来するような生息地では、目視調査で個体数を数えることが困難です。そういう場所での新しい調査方法として、ドローンで空撮した写真からガンカモ類を数える方法を実験しています。ガンカモの群れは空からどんなふうに見えているのか、鳥の視点から撮影した写真をご覧ください。


ドローンから空撮したスズガモの群れ

ガンカモ調査研修会

 大分県で見られるカモ類について、初めてカモを観察する方から身近なカモの識別ができる方を対象に、スライドを見ながら識別ポイントを解説します。その後、野外に出てカモの数をカウントする調査の実習を行います。初心者~中級者の方が対象ですので、カモを観察するのが初めてという方も大歓迎ですので、お気軽に参加してください。


問い合わせ

 ガンカモ調査交流会についてのお問い合わせは、バードリサーチの神山和夫()までご連絡ください。