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シギ・チドリ類ってどんな鳥?

 ◯干潟、川、沼、砂浜、水田など浅い水辺を利用する水鳥。
 ◯体長は10~60cmぐらい。
 ◯日本を通過する種はアラスカやシベリアなどで夏に子育てをし、冬に東南アジアやオーストラリアに移動します。
 ◯その距離1万km!(片道)
 ◯日本には春と秋に一時的に立ち寄ります。冬を日本で過ごす種類もいます。
 ◯Shorebirds(海や水辺の岸にいる鳥)、Waders(水中を歩いてわたるもの)、渉禽類とも表現。

分類

 

分類

 鳥網チドリ目
  シギ科 日本で58種記録。世界で89種。
  チドリ科 日本で12種記録。世界に約60種。
  タマシギ科、ミヤコドリ科、セイタカシギ科、レンカク科、ツバメチドリ科も含む。


形態

 

骨格

 嘴が敏感な感覚器となっており、土壌をつつくなどして探餌する。

内蔵・筋肉

 移動前、脂肪を貯め体重が2倍になる。消化器官や筋肉の活動をコントロール

嘴の多様性

 シギ・チドリ類は、様々な嘴の形態を持っている、長い(オオハシギ、タシギ)、短い(トウネン)、下に大きく湾曲(チュウシャクシギ、ホウロクシギ)、上に反る(ソリハシシギ、オオソリハシシギ)、ヘラ状(ヘラシギなど)は、干潟などの同所的な場所で採食するため、採りやすい餌によって食いわけを行い共存を可能にしていると説明されている。

羽・換羽

 

逆影(カウンターシェイディング)

 背面の色が濃く腹部側が明るい色のサバ科の魚類などでも知られ、背面が明るく照らされ腹面は影になり結果全体が背景に溶け込んで隠蔽される体色のことを逆影と呼ぶ。開けた場所に生息するシギ・チドリ類でも背面が濃く、腹面が明るい色合いの種が多く、逆影による隠蔽色と考えられている。ダイゼンの夏羽などはその逆を利用し腹部が黒くなり、繁殖期に目立つ色合いとなる。
 


 

行動

 

渡り・フライウェイ

 ロシア極東部・アメリカアラスカなどから東南アジア・オーストラリアへ年間2回の長距離の移動を行う。移動距離は片道10,000km以上におよぶ種もいる。オオソリハシシギでは、秋にアラスカの繁殖地からニュージーランドの越冬地まで太平洋上を約11,000km縦断することが知られている。
 昼に渡る種もいれば、夜間に移動する種もいる。夜間の移動は、天敵に見つかりにくく、熱の発散ができる。また、気流が安定していることも有利な条件である。
 シギ・チドリ類は、高度2000~4000m付近を飛翔していると考えられるが、オオソリハシシギのように7000mあたりを飛翔している種もいる。
 イギリスのコオバシギの研究では、長距離の渡りを行なう個体と渡りを行わない個体では、渡りを行う個体のほうが冬のエネルギ-消費は40%少ないという報告がある。渡りを行なう個体には移動時の負担と危険のリスクがあるが、追い風が吹く時期でもあるため、渡りのコストは少ないと考えられている。ホウロクシギでは、年齢や気象条件などにより渡りを中断して越冬地までいかない個体もいる。
 渡る利益と留まる利益はトレード・オフの関係にある。シギ・チドリ類の飛翔持続距離が3000~4000kmと推定されている。

 

群れ



地理生態


分布


生息環境


繁殖地・越冬地・中継地

 日本は主に中継地・越冬地である。国内で繁殖:ヤマシギ、アマミヤマシギ(奄美大島)、オオジシギ、アカアシシギ(北海道東部)、イソシギ。日本では、シロチドリ、イカルチドリ、コチドリ、ケリ、タゲリが繁殖する。

繁殖生態


婚姻システム


ディスプレイ


営巣地・巣・選択・密度


卵・抱卵・孵化



採食生態


食物


採餌方法

 チドリ類は干潟や湿地上を走り、湿地の表層にいるエサを採食(視覚を利用する)

エネルギー


 

保全


現状

各種の増減傾向

脅威

「自然発生的な脅威」   巨大津波、火山活動、気候変動など
「現在進行中の人為的な脅威」  農業の集約化、人工構造物の建設による干潟や沿岸湿地の消失、沿岸域の富栄養化など
「将来潜在的な脅威」   マイクロプラスチック、マリンスポーツ、感染症など

 繁殖地、越冬地における生息地の乾燥化? 農業の集約化 放牧の変化 牧草の刈取り時期の変化 水田の湛水状況の変化 水田の放棄 温帯域、亜北極圏の繁殖地における植林 干潟や湿地の埋め立て 沿岸域の再開発に伴う湿地再生 マングローブの消失 塩性湿地のマングローブ化 養殖産業による水質汚染 沿岸域の富栄養化 Spartina属植物(ヒガタアシ類)や他の被子植物の繁茂 河川管理による自然攪乱の抑制 人によるディスターバンス シギ・チドリ類の餌となる生物の乱獲 狩猟? 捕食者の増加 外来種

▼気候変動
 気温、降水量や降水の時期、異常気象の頻度・程度などの変化は、土地利用、餌資源、季節性湿地、生物季節、捕食圧、感染症、寄生虫などの変化を通してシギ・チドリ類に影響。
 ただし、相互作用が複雑、予測困難。

▼ツンドラ地域における生息地の消失
 気温上昇は、害虫の大量発生の頻度増加、野火の頻度・程度の増加、湿地の乾燥化などを引き起こし、シギ・チドリ類の繁殖にも影響。
 
▼海面上昇
 温暖化による熱膨張や極域の氷融解のために、海面上昇すると予測されている。→ 営巣地や採食地が変化、消失する可能性

▼底質の堆積システムの変化
 長江では、三峡ダム完成後、土砂供給量が激減。
 干出部(潮間帯地域の面積や場所、底質など)は、土砂供給量の変化によって変わりうる。
 シギ・チドリ類がどれだけ柔軟に渡りルートや越冬地を変えられるのかによって、影響の大きさは異なってくる。

 →環境変化のスピードや、残った湿地が増加した個体群を支えられるか?

▼感染症
 鳥インフルエンザ いまのところ、シギ・チドリ類への影響は小さい。
 シギ・チドリ類は優良な中継地に極度に集中する可能性があり、その場合は感染症の危険が大きくなる。

フライウェイ

 世界に9つのフライウェイがあるとされ、日本は、東アジア-オーストラリア地域フライウェイ(East Asian-Australasian Flyway)に属する。 当フライウェイは、渡り性シギ・チドリ類63個体群のうち、38%が減少傾向にある。 渡り性シギ・チドリ類20個体群がIUCNのREDLISTにおいて絶滅危惧種に該当。 最も絶滅危惧種が多く、人口の多い地域で、急激な生息地の消失が危惧される。 水鳥に関する生態情報は少ない。

人との関係

 ・水田に依存する種
 ・黄海に依存する種

日本の干潟と開発

 重要な渡来地でありながら保護区域に指定されていない場所を抽出 干潟の鳥の調査サイト152カ所のうち,10.0%が特別地域,24.7%が普通地域,66.7%が未指定地域 個体数,ラムサール基準値(一部フライウェイ基準値)を超えた種数に着目すると,河川湖沼の鳥が多数訪れるサイトは比較的保護されているが,干潟の鳥が多数訪れる場所については保護指定が遅れている状況

ラムサール条約

 国境を越えて移動する渡り鳥には、移動ルートの環境保全を進める必要があり、国際的な保護が求められている。 ラムサール条約  特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約

東アジア-オーストラリア地域フライウェイパートナーシップ(EAAFP)

 東アジア-オーストラリア地域における渡り鳥の重要生息地の国際的なネットワークを構築すること、重要生息地の普及啓発、そして保全活動を促進すること

アカアシシギ(シギ科)

コチドリ(チドリ科)

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