バードリサーチ ニュース

2005年4月号 (Vol.2 No.4)

 
【 もくじ 】

――――――――――――――――――――――――――――――

1.◆参加者募集◆ 季節前線ウォッチ始まりました!

2.◆調査協力依頼◆ スズメの死体を拾ったら

3.◆助成金情報◆ 水域環境に関する助成金のご紹介

4.◆活動計画◆ 研究誌Bird Researchを発行します!

5.◆活動計画◆ 東京バードフェスティバル2005に出展します!

6.◆論文紹介◆ ヒナの防衛と給餌のジレンマ

7.◆生態図鑑◆ スズメ

8.◆活動報告◆ カワウ関東標識調査2005報告

9.◆学会情報◆ 第52回日本生態学会大会参加報告

10.◆学会情報◆ 日韓カラス科セミナー参加報告

――――――――――――――――――――――――――――――

このページは,ニュースレターの概要版です.
普通会員もしくは賛助会員に入会いただければ,正式版を閲覧することができます.入会をお待ちしております.


【 概 要 】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1.◆参加者募集◆ 季節前線ウォッチ始まりました!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 東京で私が見ている範囲では,センダイムシクイの飛来時期が,1990年代前半は4月中旬だったのですが,最近では4月下旬〜5月上旬になり,遅くなっているように感じています.逆に,新潟のコムクドリの繁殖開始時期は早くなっているという報告があります.鳥たちの生活に何がおきているのでしょうか?

 そこで鳥の飛来日と初鳴きの調査「季節前線ウォッチ」をはじめることにしました.まずは,一般の人でもわかりやすい身近で特徴的な鳥たちを対象に選びました.春の調査では,ウグイスとヒバリの初鳴き,ツバメ,カッコウ,アオバズクの飛来日を調べます.秋の調査では,モズの高鳴き,ジョウビタキとツグミの飛来日を調べます.

○これらの鳥の初鳴きや飛来を確認しましたら,下記ホームページよりお知らせ下さい.

 http://www.bird-research.jp/1_katsudo/index_kisetsu_chosakekka.html

【植田睦之】

もくじに戻る↑

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

2.◆調査協力依頼◆ スズメの死体を拾ったら

           〜研究協力(サンプル提供)のお願い〜

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 私達はスズメが人間と共存してきた歴史の中でどのように分布を拡大してきたのかに興味を持ち,DNAを用いてスズメがどのような遺伝的地理変異を持っているのかということを研究しています.

 この研究では全国各地からスズメのサンプル(死体など)を集めています.死体を拾われた際はできるだけ早く個体全体を冷凍保存し,送っていただけると助かります.サンプルをご提供いただける場合は,発送前に下記までご連絡ください.皆さまのご協力をお願いいたします. 

○連絡先 ・ サンプルの送付先----------

 〒060-0810 北海道札幌市北区北10条西5丁目A-501

 北海道大学大学院 地球環境科学研究科環境情報医学講座

 電話 011-706-2251  FAX 011-706-4864

 泉 洋江(イズミ ヒロエ)  

 長谷川理(ハセガワ オサム) 

もくじに戻る↑

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

3.◆助成金情報◆ 水域環境に関する助成金のご紹介

          〜市民グループ活動の成果公表費用を助成〜

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 グループで水辺の鳥の調査や写真撮影などの活動をされている皆さま,その成果を公表してみませんか?公表するのに必要な費用を助成する支援事業のお知らせが届きましたので,ご紹介します.

○概 要

 財団法人日本科学協会では,NGO・NPO・市民グループによる地域の水域環境についての調査・研究・学習活動・保全活動の成果を地元の方々に公表するための費用を助成しています.

・事業名 :平成17年度「水域環境をめぐる学習活動等の成果公表支援」事業

・助成金額:100万円を上限として,申請内容を考慮の上,助成額を決定

・募集期間:平成17年5月9日から平成17年6月6日<必着>まで

○詳しくはホームページをご覧ください

 水域環境をめぐる学習活動等の成果公表支援」サイト

 http://www.jss.or.jp/suiiki/index.html

もくじに戻る↑

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

4.◆活動計画◆ 研究誌Bird Researchを発行します!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 発行が遅れていたバードリサーチの研究誌ですが,「Bird Research」という誌名で発行することにして準備を始めました.最初の論文を6月くらいに公開できれば,と考えています.「Bird Research」はオンライン雑誌で,受理されたものから即座に編集し,ホームページ上で公開します.売りはこの速報性とホームページ上の利点を生かした動画や音声,資料の添付です.

 論文作成の際は,投稿規程を参考にして下さい.投稿前の論文作成の相談にも応じます.記念すべき創刊号です.皆さまのご投稿を心よりお待ちしています.

【相談先】 植田睦之 mj-ueta @ bird-research.jp

【投稿規程】 http://www.bird-research.jp/1_newsletter/index.html

もくじに戻る↑

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

5.◆活動計画◆ 東京バードフェスティバル2005に出展します!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

2005年5月14,15日(土,日)に東京港野鳥公園で開催される「東京バードフェスティバル」 (http://www.tptc.or.jp/park/event/tbf2005.htm)にバードリサーチも出展いたします.バードリサーチが進めている参加型調査の宣伝のほか,パソコンを持ち込んでBird Base などのデータベースソフトの紹介をする予定です.

○洋上バードウォッチング

 東京バードフェスティバルの企画イベント「洋上バードウォッチング」でバードリサーチの加藤ななえが講師を務めます.カワウのコロニーがある第六台場を巡るコースということで,そこに生息するカワウの生態を中心に,水鳥の観察と解説,第六台場の歴史のお話も少しするかもしれません.


もくじに戻る↑

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

6.◆論文紹介◆ ヒナの防衛と給餌のジレンマ

         〜共働きするシロカツオドリ〜

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 シロカツオドリはコロニーを作って繁殖していますが,隣の巣の親鳥が不在にしているとそのヒナを攻撃することがあります.しかし,シロカツオドリの両親はヒナを残して2羽とも出かけてしまうことがあります.ヒナを巣に残していくと,気温の変化によるストレスと他の親鳥による攻撃にヒナを無防備にさらすことになりますが,もし共働きができるのであれば1羽ずつ交互に採食に出かけるよりも餌を多く運んでくることができます.Sue Lewisさん達は共働きをするかどうかは,この2つの要素の間のトレードオフによって決まっているのではないかと考えました.

 共働きは2羽同時に巣を離れるのではなく,片親が採食に出かけている間に残された方の親鳥が巣を離れることによって起きるのですが,後から巣を離れた親鳥はいつもよりコロニーに近い場所で採食し,早めに戻ってくるようです.この傾向はヒナが小さい時に顕著でした.ヒナが大きくなると採食トリップにかける時間は長くなりました.採食トリップに占める共働きの割合は,孵化後3週目までは0%,5週目までは2%でしたが,9週目以降は32%にまで増加しました.

 シロカツオドリの親鳥たちはヒナのリスクと餌の要求量のトレードオフの問題をヒナの成長段階をもとに解決しているとこの論文ではまとめています.【高木憲太郎】

Lewis, S., Hamer, K.C., Money, L., Griffiths, R., Wanless, S., Sherratt, T.N. 2004. Brood neglect and contingent foraging behavior in a pelagic seabird. Behav Ecol Sociobiol 56: 81-88.


もくじに戻る↑

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

7.◆生態図鑑◆ スズメ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

○英名:Tree Sparrow  学名:Passer montanus

○分類:スズメ目 ハタオリドリ科

○抱卵・育雛期間:

 産卵は1日1個ずつ行い,抱卵期間は12日,育雛期間は14日.巣立ち後も親鳥の給餌を10日間くらい受ける.抱卵,雛への給餌とも雌雄で協力して行うが,雌の方が中心に行う.

○日本におけるスズメ個体群の遺伝的地理変異

 スズメが人為的環境に依存して生息していることを考えると,スズメの分布拡大の歴史が人間の歴史と関係の深い特徴を持つ可能性が高い.そこでスズメがどのような遺伝的地理変異を持っているのかを,マイクロサテライトDNAを用いて調べた.

 本州の2地域(京都府,群馬県),北海道の4地域(札幌市,函館市,利尻島,知床)について調べたところ,札幌,利尻,知床の3地域は京都,群馬,函館の3地域とは異なる遺伝的特徴を持つ可能性が示唆された.函館と本州の個体群は似たような構造をもっていたのは,函館が北海道の中でも早くから開拓され,本州と古くから交流があった地域であることが関係しているのかもしれない.

 北海道で米,麦などの穀物が盛んに栽培されるようになったのは開拓以降である.スズメはアイヌ語では「アまメチカプ(粟・食う・鳥)」と呼ばれており,開拓以前から北海道に生息していたものと思われるが,現在のように生息地を広げたのは,開拓が進み穀物が栽培され,人が多く住むようになってからではないかと思われる.札幌以北のスズメの個体群は函館以南の個体群よりも後で分集団化されたのかもしれない.

【泉洋江 北海道大学大学院地球環境科学研究科生態環境科学専攻】

◆その他掲載記事

 ・全長,翼長,尾長,露出嘴峰長,ふ蹠長,体重

 ・羽色,鳴き声

 ・分布,生息環境

 ・巣,卵

 ・採食行動その他

 ・スズメとニュウナイスズメ,イエスズメの関係

 ・スズメの移動分散

もくじに戻る↑

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

8.◆活動報告◆ カワウ関東標識調査2005報告

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 カワウ標識調査グループ(世話人代表:福田道雄さん)と日本野鳥の会自然保護室の共同調査として1998年から行われてきた関東でのカワウの標識調査を,今年からはカワウ標識調査グループとバードリサーチの共同調査としてやっていくことになりました.

 今年は3月12日に第六台場(東京都港区)で85羽,4月7日に行徳鳥獣保護区(千葉県市川市)で67羽,4月9日に小櫃川河口(千葉県木更津市)で184羽のヒナに標識しました.ふかふかのヒナを巣から取り出し,足にリングを装着して元の巣に戻すという作業をひたすら続けるのですが,親が早く巣に戻れるように,この作業は速やかに進め,どんどん移動していかなければなりません.カワウのコロニーの中は,魚食性鳥類特有の臭いに満ちていますが,作業を始めてしばらくすると,この独特の臭いも気にならなくなります.人の鼻は便利にできていますね.【加藤ななえ】

○詳しくはホームページをご覧ください.

 カワウ標識調査グループのホームページ

 http://www6.ocn.ne.jp/~cring973

もくじに戻る↑

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

9.◆学会情報◆ 第52回日本生態学会大会参加報告

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 第52回日本生態学会大会が2005年3月27〜30日にグランキューブ大阪で開かれました.今回も幅広いテーマで様々な分類群を対象とした研究の成果が発表されていました.

 大会の最後は自由集会でした.私は「第4回種子散布研究会 鳥の色覚と果実の色彩戦略」というテーマの会場に入りました.鳥の多くは人間には見えない近紫外線を見ることができるそうで,それが生態的にも重要な信号となっている種があるそうです.一見すると雌雄同色に見える鳥たちも紫外線という要素を加えると,モンシロチョウと同じように,性的な違いが浮かび上がってくるわけです.鳥たちが実際にはどのように世界を見ているのか,考えながら調査研究しなければいけないと思いました.【高木憲太郎】

もくじに戻る↑

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

10.◆学会情報◆ 日韓カラス科セミナー参加報告

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 生態学会の翌日は大阪から京都に移動して京都大学で開かれた日韓カラス科セミナーに参加し,ミヤマガラスの分布調査について話をしてきました.私の講演要旨はホームページ(http://www.bird-research.jp/1_ronbun/index.html)に掲載しています.

 最初は松原始さんとChang-Yong Choi さんがそれぞれ日韓のカラス科の鳥とその研究について概説されました.並べて話を聞くと日韓の違いがはっきり見えて面白いものです.日本では都市にいるのはハシブトガラスですが,韓国の同じニッチを占めているのはカササギだとか・・・. Hyun-Young Nam さんのカササギの研究の話は,繁殖成功度などのデータがしっかりそろっていて聞き応えのある内容でした.【高木憲太郎】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

バードリサーチニュース Vol.2 No.4   2005年 4月13日発行

発行元: 特定非営利活動法人 バードリサーチ

〒191-0032 東京都日野市三沢1−26−9 森美荘1−102

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
もくじに戻る↑