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2014年度バードリサーチ活動報告

特定非営利活動法人 バードリサーチ


鳥類や自然環境の基礎情報の収集解析事業

本プロジェクトでは,保全に利用することのできる基礎的な情報を収集,データベース化することを目的に活動しています。目的が一致している環境省のモニタリングサイト1000に関わるとともに,モニタリングサイト1000では漏れてしまうような身近な場所での情報収集をすすめています。また,長期間のモニタリングに不可欠と考えている自動的な情報収集の手法開発を,また特定の種にしぼった情報収集としてツバメやヒクイナ,ヨタカ等の調査をすすめています。

鳥類相のモニタリング

  • モニタリング事業
    委託主 環境省,自主事業
    目的 全国の鳥類相の変化をモニタリングできる体制を構築し,実施する。変化の原因を明らかにし,保全に役立てる。
    内容と成果 環境省のモニタリングサイト1000の受託を受け,陸生鳥類,ガンカモ類およびシギチドリ類についての調査の運営およびデータの蓄積や解析を行なった。また里山の調査についても検討委員として関わった。モニタリングサイト1000でモニタリングされていない都市域については,独自のベランダバードウォッチでモニタリングを継続した。各地で行なわれている探鳥会等の情報もモニタリングに役立てるためのデータベース「フィールドノート」によるデータ収集も行なった。
  • 全国鳥類繁殖分布調査
    委託主 自主事業
    目的 全国の鳥類の分布変化を明らかにするために調査を実施する。
    内容と成果 2016年からの調査実施に向けて,ホームページの開設,ニュースレターの発行など準備を開始した。現時点で170名が調査員登録しているが,今後個人や団体に直接働きかけるなどして,人を増やす必要がある。

    種を対象としたモニタリング

  • 分布変化の調査
    委託主 自主事業
    目的 減少しているヒクイナとヨタカ,分布拡大している外来鳥やリュウキュウサンショウクイの生息状況とその変化の有無,原因を明らかにする。
    内容と成果 ヨタカの生息状況アンケートを行なったが,参加者人数は2013年は25人,14年は39人,15年は16人と少なく夜行性の鳥の一般参加の調査の難しさがわかった。
  • シロチドリ繁殖状況調査
    委託主 自主事業
    目的 シロチドリの分布や繁殖期の密度を調査し、総個体数を推計する。
    内容と成果 シロチドリの生息状況についての情報収集。砂浜での観察の困難さから、参加者は少ない。九十九里浜での営巣状況の調査。抱卵期の死亡率が高い。

    生物季節のモニタリング

  • 季節前線ウォッチ
    委託主 自主事業
    目的 だれでも識別できる鳥の生物季節情報を収集し,温暖化の影響など明らかにする。
    内容と成果 春はウグイス,ヒバリ,ツバメ,アオバズク,オオヨシキリ,ホトトギス,カッコウ,カルガモ,キビタキ,シギチドリの情報を集め,秋はモズ,ヒヨドリ,ジョウビタキ,ツグミ,ミヤマガラスの情報を集めた。ツバメの飛来が西日本は早く北日本は逆に遅かったことなどがわかった。情報件数はやや減少傾向にあるが安定して寄せられた。
  • 森林性鳥類の繁殖時期の把握
    委託主 自主事業
    目的 一般参加型の調査では難しい森林の鳥類の繁殖時期を把握する。
    内容と成果 ICレコーダ,ライブ音源配信の聞き取り,巣箱の温度ロガーなどを利用して森林性鳥類の繁殖時期の把握を行なった。2015年は留鳥や夏鳥のさえずりは全般的に早かったが,メボソムシクイなど遅く飛来する夏鳥は遅かったことがわかった。

    調査機器の開発

  • さえずりナビの開発
    委託主 自主事業
    目的 調査に参加する敷居を高くしている鳴き声による鳥の識別を調査員が自分で学習できるように,電通大と共同でアプリケーションの開発を行なう。
    内容と成果 現在,新しいバージョンを作成すべく,準備を進めている。2015年1月19日〜7月19日までのダウンロード実績は5504件。

鳥類や自然環境の保全施策の立案提言事業

 本プロジェクトは人と鳥類の共存のために,その手法を構築していくことを目的としています。現在,人との軋轢のある種としてカワウを,希少種として猛禽類をモデルケースとして事業を実施しています。

カワウ基礎情報の収集

  • カワウの分布調査
    委託主 自主事業
    目的 カワウの生息状況の変化を把握し,管理手法などの提言を行なう。
    内容と成果 関東地方のねぐら入り個体数の調査を行ない、関東地方のカワウの個体数は安定しているが、ねぐら箇所数はまだ増加していることが分かった。
  • カワウの移動調査
    委託主 自主事業
    目的 移動の解明と広域的管理への活用
    内容と成果 東京湾沿岸にある2つのコロニーでカワウのヒナにカラーリングの標識を装着し,観察データを収集した。

    カワウ保護管理推進事業

  • 保護管理技術者育成研修会
    委託主 自然環境研究センター(環境省事業)
    目的 カワウの広域保護管理手法の普及と教育
    内容と成果 カワウの胃内容物調査と被害金額の算定について研修会を宇都宮で開催した。カワウの解剖実習とねぐらの視察のほか,被害額の算定や都道府県単位での計画作りのグループワークおこなった。また,東京と福岡で開催された哺乳類を含めた基礎編の研修会において講師を務めた。
  • 広域保護管理の推進
    委託主 環境省,関東地方・近畿地方・中国四国地方の各環境事務所,関西広域連合,山口県
    目的 広域管理のための情報共有を推進する
    内容と成果 関東および中部近畿のカワウの生息状況等のデータのとりまとめとその分析や,ホームページを利用した情報発信と情報共有を支援した。中国四国地方における広域協議会等の開催運営や広域指針の素案の作成を行なった。関東と中部近畿のカワウ広域協議会の開催を支援した。また,群馬県,千葉県,広島県,徳島県,宮城県内水面漁連より依頼を受け,検討委員などとして地域のカワウ管理に対して助言を行った。関西広域連合全域のカワウの生息状況を年3回調査し,その生息数や季節変化を明らかにした。また,大阪府と兵庫県における広域管理の実証試験を野生動物保護管理事務所に再委託して実施した。中国四国広域協議会におけるデータの継続性確保のために、山口県における冬季のカワウの生息状況と飛来状況の調査を行った。

    風力発電と鳥類との共存

  • 陸上風力発電所での猛禽類のバードストライク関連調査
    委託主 環境省
    目的 風力発電のバードストライクの問題を軽減するための基礎資料の収集
    内容と成果 バードストライクの危険の少ない陸上風力発電所をつくるための基礎資料として,オジロワシ等のワシ類の行動調査を行ない,音で注意を引いて,風車を避けさせられる可能性がわかった。
  • 洋上風力発電所でのバードストライク軽減のための調査
    委託主 新エネルギー・産業技術総合開発機構
    目的 洋上風力発電のバードストライクの問題を軽減するための基礎資料の収集
    内容と成果 洋上風力発電所の建設に際してバードストライクの問題をどう考えたら良いのか検討するために,洋上風力発電試験施設において,レーダを使った調査を行なっており,GPSロガーを使ったオオミズナギドリの追跡も行なう予定である。
  • バードストライク防止のための鳥レーダの開発
    委託主 新エネルギー・産業技術総合開発機構・環境省
    目的 バードストライクの問題を軽減するための技術開発
    内容と成果 アセスメントおよび風車の運転調整のために,ワシなどの接近を感知する手法の開発として,3次元レーダおよび複数のレーダの画像処理による3次元把握の手法開発を進めている。

    その他

  • ツバメかんさつ全国ネットワーク
    委託主 独自事業
    目的 ツバメの調査と保護を行い、その過程でバードリサーチの名前を研究分野以外の一般社会に浸透させる。
    内容と成果 多くの人目に留まる施設に対して、フン受け・ポスター・ツバメ対応マニュアルの配布を行った。関東の高速道路のサービスエリアを管理するネクスコ・メンテナンス関東に280枚納品し、ネクスコ西日本の四国と東名高速道路の管理部署に10枚ずつサンプルを提供した。フン受け印刷スポンサーのCICには600枚納品し、鉄道の駅や取引先企業などに設置してもらった。バードリサーチではホームページで告知して、一般希望者配布した。全体で約1000枚を配布することができた。これらの活動のために一般から寄付を募集し、34名から約30万円の募金が寄せられた。
  • 渡り鳥飛来状況調査
    委託主 環境省
    目的 鳥インフルエンザの防疫対策のためのガンカモ類の飛来状況の調査及び情報提供
    内容と成果 16箇所の調査地で9月から翌年5月もしくは6月まで間,月3回の調査を実施し,取りまとめを行った。環境省の調査する23か所の国指定鳥獣保護区の調査結果の取りまとめを行い,上記の16箇所の調査地と併せて環境省のホームページに掲載した。


自然環境の改善の立案提言事業

  • 河原の砂礫地調査
    委託主 自主事業
    目的 イカルチドリとコチドリの生息環境を複数の河川(多摩川、千曲川、鬼怒川)で比較し、2種の分布や営巣場所の選好性について河川間での違いもしくは共通点を得る。
    内容と成果 いずれの河川においても2種ともに砂混じりの場所を選ぶ傾向が見られ、河川における砂の供給は2種の繁殖にとって重要であることが示唆された。特にコチドリではイカルチドリよりも粒径の小さな砂礫地を営巣場所として好んでおり、2種の分布には選好する礫径の分布が影響していると考えられた。

自然環境保全と調査研究についての普及啓発事業

 本プロジェクトは全国的な調査を担うアマチュア研究者を育成することを目的に実施しています。そのために以下の活動を行なうとともに,船舶レーダーを使った調査の研修会も実施しました。

  • 調査研究支援プロジェクト
    調査研究のプランが13件集まり,審査によってこの中から9件の支援先プランを選定した。このリストをもとに寄付を募り,231票の投票と76万5千円の寄付が得られた。この寄付額のうち71万5千円を得票数に応じて支援先に分配した。
  • ID Bird
    月2回、計10回の生息環境を変えて、鳥類の観察・識別講座と鳥類調査の体験を行なった。参加者は平均して約5名。参加しやすいシステムやコンテンツの充実が課題。
  • 参加型調査『みにクル』の開催
    狭山公園,宇都宮中央公園において,定期的な鳥類調査をおこなった。また,不定期に各員が担当する調査において参加者を募り調査を体験してもらった。
  • ホームページ等の更新
    バードリサーチの活動状況を広報するため,ホームページ,ブログ,Facebookページを随時更新した         
  • ニュースレターの発行
    ニュースレターを毎月1号,計12号を発行した.各号の概要版はニュースメールとしてテキストで配信し,ホームページにも公開した.         
  • 研究誌の発行
    モニタリング特集を含む14本の論文を掲載した第10巻を2014年12月に発行した.また第11巻の論文を現時点で3本掲載している。
  • 年報の発行
    バードリサーチの1年の活動を会員や外部の人によりわかりやすく伝えるため,年報を発行した.
  • 野鳥手帖の発行
    山と渓谷社から「野鳥手帖」を発行した.かわった手帖として新聞やテレビなど各種メディアで紹介され,売上も好調だったため,来年も継続発行する予定。


損益計算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2014年7月1日   至 2015年6月30日 (単位:円)


事業損益の部
収入の部
会費収入
1,532,000
 
寄付金収入
4,515,013
 
基礎情報の収集解析事業
34,433,335
 
保全施策の立案提言事業
89,163,604
 
自然環境の改善の立案提言事業
0
 
普及啓発事業 1,740,913   
民間助成金 0
その他 0  
収入合計   131,384,885
支出の部
【事業費】    
 基礎情報の収集解析事業
18,423,278
 
 保全施策の立案提言事業
61,274,548
 
 自然環境の改善の立案提言事業
0
 
 普及啓発事業
1,681,127
 
 研究支援
625,982
 
 ツバメプロジェクト
  (次年度に繰り越し)
0
 
 人件費
29,609,529
 
 旅費交通費
765,889
 
【管理費】    
 人件費
1,559,181
 
 普及啓発事業
6,264,050
 
支出合計  
120,203,584
法人税等  
3,502,500
当期収支  
7,729,947
前期繰越損益  
64,097,846
次期繰越損益  
71,827,793



会費・寄付金収支決算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2014年7月1日   至 2015年6月30日(単位:円)


収入  
 会費収入 1,532,000
 寄付金収入(一般) 3,850,013
 寄付金収入(研究支援) 665,000
 寄付金収入(研究ツバメ) 次年度繰越
 助成金収入 0
 雑収入 0
支出
 
 普及啓発事業1,681,127
 寄付金支出(研究支援) 625,982
 寄付金支出(ツバメ) 次年度繰越
 助成金支出 0
 独自調査費 1,200,879
 一般管理費等 1,848,344
来期繰越金 690,681