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2013年度バードリサーチ活動報告

特定非営利活動法人 バードリサーチ


鳥類や自然環境の基礎情報の収集解析事業

本プロジェクトでは,保全に利用することのできる基礎的な情報を収集,データベース化することを目的に活動しています。目的が一致している環境省のモニタリングサイト1000に関わるとともに,モニタリングサイト1000では漏れてしまうような身近な場所での情報収集をすすめています。また,長期間のモニタリングに不可欠と考えている自動的な情報収集の手法開発を,また特定の種にしぼった情報収集としてツバメやヒクイナ,ヨタカ等の調査をすすめています。

鳥類のモニタリング

  • モニタリング事業
    委託主 環境省,自主事業ほか
    目的 全国の鳥類相の変化をモニタリングできる体制を構築し,実施する。変化の原因を明らかにし,保全に役立てる。
    内容と成果 環境省のモニタリングサイト1000の受託を受け,陸生鳥類,ガンカモ類およびシギチドリ類についての調査の運営およびデータの蓄積や解析を行なった。また里山の調査についても検討委員として関わった。モニタリングサイト1000でモニタリングされていない都市域については,独自のベランダバードウォッチでモニタリングを継続した。各地で行なわれている探鳥会等の情報もモニタリングに役立てるためのデータベース「フィールドノート」によるデータ収集も行なった。
  • 冬鳥ウォッチ
    委託主 自主事業
    目的 冬鳥の生息状況の長期的なモニタリングを行なう
    内容と成果 2006年からスタートした調査も今年で8年目となった。モニタリングサイト1000の結果と合わると,山では冬鳥が多く,低地では少ないことがわかった。山での木の実の多さが影響していると考えられた。

    種を対象としたモニタリング

  • ツバメかんさつ全国ネットワーク
    委託主 自主事業
    目的 ツバメの飛来時期,巣場所,ヒナの巣立ち数などを調べて,気候・環境とツバメとの関係を調べる。さらに,エントリーレベルの調査として調査参加者の裾野を広げることを目指す。
    内容と成果 多くの人目に留まる場所へのフン受け設置を行った。ネクスコ・メンテナンス関東に280枚納品し、関東の高速道路のサービスエリアに設置した。株式会社CICに600枚納品し、鉄道の駅や取引先企業などに設置してもらった。バードリサーチではホームページで告知して、一般希望者配布した。全体で約1000枚を配布することができた。埼玉県の道の駅ゆめすぎとで、営巣されては困る場所をふさぎ、別の場所の人工巣への営巣地誘導に成功した。埼玉県の道の駅二カ所で温度ロガー調査を継続した。
  • 分布変化の調査
    委託主 自主事業
    目的 減少しているヒクイナとコサギ,分布拡大している外来鳥やリュウキュウサンショウクイの生息状況とその変化の有無,原因を明らかにする。
    内容と成果 ヨタカの生息状況アンケートを新たに開始し,26名より58件の情報があつまった。昨年も少なく夜行性の鳥の一般参加の調査の難しさがわかった。
  • シロチドリ繁殖状況調査
    委託主 自主事業
    目的 シロチドリの分布や繁殖期の密度を調査し、総個体数を推計する。
    内容と成果 砂浜では、つがい間距離が150-200m。1kmあたり約5羽生息していた。
  • カワセミ食性調査
    委託主 自主事業
    目的 カワセミの食性を調査し,利用環境などでの違いを明らかにする。
    内容と成果 一般の方からカワセミが食物をくわえている写真を募集し、写真から種を同定した。河川と公園の池などではやや内容が異なっている傾向がみられた。調査は現在も継続中である。

    生物季節のモニタリング

  • 季節前線ウォッチ
    委託主 自主事業
    目的 だれでも識別できる鳥の生物季節情報を収集し,温暖化の影響など明らかにする。
    内容と成果 春はウグイス,ヒバリ,ツバメ,アオバズク,オオヨシキリ,ホトトギス,カッコウ,カルガモ,キビタキ,シギチドリの情報を集め,秋はモズ,ヒヨドリ,ジョウビタキ,ツグミ,ミヤマガラスの情報を集めた。ツバメの飛来が西日本は早く北日本は逆に遅かったことなどがわかった。情報件数はやや減少傾向にあるが安定して寄せられた。
  • 森林性鳥類の繁殖時期の把握
    委託主 自主事業
    目的 一般参加型の調査では難しい森林の鳥類の繁殖時期を把握する。
    内容と成果 ICレコーダ,ライブ音源配信の聞き取り,巣箱の温度ロガーなどを利用して森林性鳥類の繁殖時期の把握を行なった。2014年は留鳥のさえずりが早く,また,少なくともヤマガラでは繁殖期も早かったことなどがわかった。

調査機器の開発

  • さえずりナビの開発
    委託主 自主事業
    目的 調査に参加する敷居を高くしている鳴き声による鳥の識別を調査員が自分で学習できるように,電通大と共同でアプリケーションの開発を行なった。
    内容と成果 入力システムの搭載,アンドロイド対応する次期バージョンのアプリが公開した。iPhon版は最新版のバージョンアップを行なった人は20,637人,アンドロイド版は日平均146人が利用している。観察情報の投稿機能も784人が利用している。

鳥類や自然環境の保全施策の立案提言事業

 本プロジェクトは人と鳥類の共存のために,その手法を構築していくことを目的としています。現在,人との軋轢のある種としてカワウを,希少種として猛禽類をモデルケースとして事業を実施しています。

   カワウ基礎情報の収集

  • カワウの分布調査
    委託主 特定非営利活動法人行徳野鳥観察舎友の会(千葉県事業),自主事業
    目的 カワウの生息状況の変化を把握し,管理手法などの提言を行なう。
    内容と成果 関東地方のねぐら入り個体数を調査で、関東地方のカワウの個体数は安定しているが、ねぐら箇所数はまだ増加していることが分かった。ゴルフ場等私有地での被害への対応への提言。
  • カワウの移動調査
    委託主 自主事業
    目的 移動の解明と広域的管理への活用
    内容と成果 東京湾沿岸にある2つのコロニーでカワウのヒナにカラーリングの標識を装着し,観察データを収集した。論文投稿中

    カワウ保護管理推進事業

  • 保護管理技術者育成研修会
    委託主 自然環境研究センター(環境省事業)
    目的 カワウの広域保護管理手法の普及と教育
    内容と成果 カワウの胃内容物調査と被害金額の算定について研修会を岡山で開催した。カワウの解剖実習のほか,都道府県単位での計画作りのグループワークおこなった。また,東京と大阪で開催された哺乳類を含めた基礎編の研修会において講師を務めた。
  • 広域保護管理の推進
    委託主 環境省,関西広域連合
    目的 広域管理のための情報共有の推進と,カワウの生息状況や被害等の情報収集,生息状況調査と広域管理計画骨子の作成
    内容と成果 関東および中部近畿のカワウの生息状況等のデータのとりまとめとその分析や,ホームページを利用した情報発信と情報共有を支援した。中国四国地方における広域保護管理の検討のために,カワウの生息状況や被害状況などの情報収集や現地の行政と漁協に対するヒアリング調査を行なった。特定鳥獣保護管理計画技術マニュアルの改訂版を作成し、その広報のためのパンフレットの作成を行なった。都道府県や海外のカワウ管理の事例を集め、都道府県向けの情報誌を作成した。中部近畿カワウ広域協議会の開催を支援した。中国四国カワウ広域協議会の設立に向け、勉強会や準備会の運営、講師を務めた。また、群馬県、千葉県、広島県、山口県より依頼を受け、検討委員などとして地域のカワウ管理に対して助言を行った。関西広域連合全域のカワウの生息状況を年3回調査し、その生息数や季節変化を明らかにした。また,大阪府と兵庫県における広域管理の実証試験を野生動物保護管理事務所に再委託して実施した。

    猛禽類との共存

  • 風力発電所でのバードストライク関連調査
    委託主 環境省
    目的 風力発電のバードストライクの問題を軽減するための基礎資料の収集
    内容と成果 バードストライクの危険の少ない陸上風力発電所をつくるための基礎資料として,オジロワシ等のワシ類の行動調査を行ない,食物の存在がバードストライクの発生と関わっている可能性がわかった。
  • 洋上風力発電所でのバードストライク軽減のための調査
    委託主 新エネルギー・産業技術総合開発機構
    目的 洋上風力発電のバードストライクの問題を軽減するための基礎資料の収集
    内容と成果 洋上風力発電所の建設に際してバードストライクの問題をどう考えたら良いのか検討するために,洋上風力発電試験施設において,レーダによる鳥の回避行動などについて調査した。特にミズナギドリ類は風車を避けていると考えられた。

    その他

  • 渡り鳥飛来状況調査
    委託主 環境省
    目的 鳥インフルエンザの防疫対策のためのガンカモ類の飛来状況の調査及び情報提供
    内容と成果 16箇所の調査地で9月から翌年5月もしくは6月まで間,月3回の調査を実施し,取りまとめを行った。環境省の調査する23か所の国指定鳥獣保護区の調査結果の取りまとめを行い,上記の16箇所の調査地と併せて環境省のホームページに掲載した。


自然環境の改善の立案提言事業

  • 河原の砂礫地調査
    委託主 自主事業
    目的 イカルチドリとコチドリの生息環境を複数の河川(多摩川、千曲川、鬼怒川)で比較し、2種の分布や営巣場所の選好性について河川間での違いもしくは共通点を得る。
    内容と成果 いずれの河川においても2種ともに砂混じりの場所を選ぶ傾向が見られ、河川における砂の供給は2種の繁殖にとって重要であることが示唆された。特にコチドリではイカルチドリよりも粒径の小さな砂礫地を営巣場所として好んでおり、2種の分布には選好する礫径の分布が影響していると考えられた。


自然環境保全と調査研究についての普及啓発事業

 本プロジェクトは全国的な調査を担うアマチュア研究者を育成することを目的に実施しています。そのために以下の活動を行なうとともに,船舶レーダーを使った調査の研修会も実施しました。

  • 10周年記念研究集会等の開催
    設立10周年を記念し、研究集会を2013年12月に東京都豊島区の立教大で開催した。研究例会(研究集会の簡易版)は2013年8月にツバメについて開催した。また,モニタリングサイト1000の事業の中での集会を森林について5か所,シギチドリ,ガンカモについてそれぞれ1か所で開催した。
  • 調査研究支援プロジェクト
    調査研究のプランが17件集まり,審査によってこの中から8件の支援先プランを選定した。このリストをもとに寄付を募り,194票の投票と59万円の寄付が得られた。この寄付額のうち58万5千円を得票数に応じて支援先に分配した。
  • ホームページの開設
    調査プロジェクトの内容や結果をホームページに随時掲載した.また,ホームページのデザインを一新し,全面的なリニューアルを行なった。
  • ニュースレターの発行
    ニュースレターを毎月1号,計12号を発行した.各号の概要版はニュースメールとしてテキストで配信し,ホームページにも公開した。
  • 研究誌の発行
    13本の論文を掲載した第9巻を2013年12月に発行した.また第10巻の論文を現時点で4本掲載,査読中の論文が3本ある。モニタリングの特集論文を掲載予定である。         
  • 年報の発行
    バードリサーチの1年の活動を会員や外部の人によりわかりやすく伝えるため,年報を発行した。         
  • 野鳥手帖の発行
    山と渓谷社から「野鳥手帖」を発行した.かわった手帖として新聞やテレビなど各種メディアで紹介され,売上も好調だったため,来年も継続発行する予定。
  • 参加型調査『みにクル』の開催
    狭山公園,宇都宮中央公園において,定期的な鳥類調査をおこなった。また,不定期に各員が担当する調査において参加者を募り調査を体験してもらった。


損益計算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2013年7月1日   至 2014年6月30日 (単位:円)


事業損益の部
収入の部
会費収入
1,336,000
 
寄付金収入
4,875,351
 
基礎情報の収集解析事業
35,659,225
 
保全施策の立案提言事業
66,098027
 
自然環境の改善の立案提言事業
0
 
普及啓発事業 1,341,197   
民間助成金 2,513,000
その他 771,639  
収入合計   112,594,439
支出の部
【事業費】    
 基礎情報の収集解析事業
15,858,692
 
 保全施策の立案提言事業
23,687,820
 
 自然環境の改善の立案提言事業
0
 
 普及啓発事業
2,269,506
 
 研究支援
615,952
 
 ツバメプロジェクト
435,304
 
 人件費
31,914,680
 
 旅費交通費
792,644
 
【管理費】    
 人件費
1,679,720
 
 普及啓発事業
7,202,109
 
支出合計  
84,456,427
法人税等  
2,341,000
当期収支  
25,797012
前期繰越損益  
29,728,562
次期繰越損益  
55,525,574



会費・寄付金収支決算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2013年7月1日   至 2014年6月30日(単位:円)


収入  
 会費収入 1,336,000
 寄付金収入(一般) 3,731,535
 寄付金収入(研究支援) 702,000
 寄付金収入(研究ツバメ) 441,816
 助成金収入 2,513,000
 雑収入 434,905
支出
 
 普及啓発事業748,647
 寄付金支出(研究支援) 615,952
 寄付金支出(ツバメ) 435,304
 助成金支出 2,495,067
 独自調査費 150,031
 一般管理費等 1,947,822
来期繰越金 2,766,433