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2011年度バードリサーチ活動報告

特定非営利活動法人 バードリサーチ


鳥類や自然環境の基礎情報の収集解析事業

本プロジェクトでは,保全に利用することのできる基礎的な情報を収集,データベース化することを目的に活動しています。目的が一致している環境省のモニタリングサイト1000に関わるとともに,モニタリングサイト1000では漏れてしまうような身近な場所での情報収集をすすめています。また,長期間のモニタリングに不可欠と考えている自動的な情報収集の手法開発を,また特定の種にしぼった情報収集としてツバメやヒクイナ,ミヤマガラス等の調査をすすめています。

鳥類のモニタリング

  • モニタリング事業
    委託主 環境省,自主事業ほか
    目的 全国の鳥類相の変化をモニタリングできる体制を構築し,実施する。変化の原因を明らかにし,保全に役立てる。
    内容と成果 環境省のモニタリングサイト1000の受託を受け,陸生鳥類,ガンカモ類およびシギチドリ類についての調査の運営およびデータの蓄積や解析を行なった。また里山の調査についても検討委員として関わった。モニタリングサイト1000でモニタリングされていない都市域については,独自のベランダバードウォッチでモニタリングを継続した。各地で行なわれている探鳥会等の情報もモニタリングに役立てるため,データベースフィールドノートを運営し,個人や日本野鳥の会の支部,観察団体の観察記録のデータベース化についてのサポートも行なった。
  • 冬鳥ウォッチ
    委託主 自主事業
    目的 冬鳥の生息状況の長期的なモニタリングを行なう
    内容と成果 年変動,地域差の大きい冬鳥の長期的な変化をつかむために,2006年からスタートし,今年で6年目となった。ツグミが少ないという話題が多かったため,ツグミについての情報収集も行ない,北や標高の高い地域は決して少なくはなく,低地についても(木の実の豊作などで)飛来が遅れていた可能性が示された。

    種を対象としたモニタリング

  • ツバメかんさつ全国ネットワーク
    委託主 自主事業
    目的 ツバメの飛来時期,巣場所,ヒナの巣立ち数などを調べて,気候・環境とツバメとの関係を調べる。さらに,エントリーレベルの調査として調査参加者の裾野を広げることを目指す。
    内容と成果 初認調査では今年の飛来時期は3月下旬で平年並みだった。新たに道の駅でのツバメの調査と保護のためのプロジェクトを開始し、モデルとして埼玉県春日部市の道の駅庄和で、巣内への温度計設置と、糞受や人工巣の設置を行った。さらにそのための募金活動を行った。活動はテレビや新聞で紹介され、道の駅庄和もツバメドラ焼き発売するなど、道の駅スタッフのツバメへの関心が高まった。寄付金は38名から33万4千円が集まった。来年度にプロジェクトを実施する道の駅を増やすため、埼玉県、石川県の県庁関係者と相談を始めている。
  • 分布変化の調査
    委託主 自主事業
    目的 減少しているヒクイナとコサギ,分布拡大している外来鳥やリュウキュウサンショウクイの生息状況とその変化の有無,原因を明らかにする。
    内容と成果 外来鳥の調査はフィールドノートのデータベースからの情報等あわせると,おおまかな分布はわかる程度の情報は集まった。
  • 子雀ウォッチ
    委託主 自主事業
    目的 減少しているといわれているスズメの減少要因を明らかにする。
    内容と成果 1つがいあたりの巣立ちヒナ数,地域のヒナの割合を調査した。全国各地から情報が集まり,都市部の繁殖成績が低いこと,畑が多すぎても繁殖成績がわるそうなことなどが見えてきた。2012年の調査で一区切りさせる予定である。
  • キビタキ・ガビチョウ鳴きまね調査
    委託主 自主事業
    目的 キビタキとガビチョウの鳴きまねの分布を調査した。
    内容と成果 鳴きまね調査では,78件の情報が集まり,各種の鳴きまね音源も集まりホームページに掲載することができた。
  • 雄雌調査
    委託主 自主事業
    目的 モズ,ジョウビタキ,ルリビタキの雄雌の分布や利用環境を明らかにする。
    内容と成果 モスとジョウビタキが雄雌により利用環境が違うことがわかった。2012年の調査を区切りにしてとりまとめを行う予定である。

    生物季節のモニタリング

  • 季節前線ウォッチ
    委託主 自主事業
    目的 だれでも識別できる鳥の生物季節情報を収集し,温暖化の影響など明らかにする。
    内容と成果 春はウグイス,ヒバリ,ツバメ,アオバズク,オオヨシキリ,ホトトギス,カッコウ,カルガモ,キビタキ,シギチドリの情報を集め,秋はモズ,ヒヨドリ,ジョウビタキ,ツグミ,ミヤマガラス,シギチドリの情報を集めた。
  • 森林性鳥類の繁殖時期の把握
    委託主 自主事業
    目的 一般参加型の調査では難しい森林の鳥類の繁殖時期を把握する。
    内容と成果 ICレコーダ,ライブ音源配信の聞き取り,巣箱の温度ロガーなどを利用して森林性鳥類の繁殖時期の把握を行なった。2012年は桜の開花など遅かったにも関わらず,鳥の繁殖は早かったことが確認された。

    調査機器の開発

  • さえずりナビの開発
    委託主 自主事業
    目的 調査に参加する敷居を高くしている鳴き声による鳥の識別を調査員が自分で学習できるように,電通大と共同でアプリケーションの開発を行なった。
    内容と成果 調査に参加する敷居を高くしている鳴き声による鳥の識別を調査員が自分でできるように,電通大と共同でアプリケーションの開発を行なった。

鳥類や自然環境の保全施策の立案提言事業

 本プロジェクトは人と鳥類の共存のために,その手法を構築していくことを目的としています。現在,人との軋轢のある種としてカワウを,希少種として猛禽類をモデルケースとして事業を実施しています。

   カワウ基礎情報の収集

  • カワウの分布調査
    委託主 特定非営利活動法人行徳野鳥観察舎友の会(千葉県事業),自主事業
    目的 カワウの生息状況の変化を把握し,管理手法などの提言を行なう。
    内容と成果 関東地方のねぐら入り個体数を調査で、関東地方のカワウの個体数は安定しているが、ねぐら箇所数はまだ増加していることが分かった。
  • カワウの移動調査
    委託主 自主事業
    目的 移動の解明と広域的管理への活用
    内容と成果 :東京湾沿岸にある3つのコロニーでカワウのヒナにカラーリングの標識を装着し,観察データを収集した。行徳生まれの個体が青森県むつ市のコロニーで発見された。

    カワウ保護管理推進事業

  • 保護管理技術者育成研修会
    委託主 自然環境研究センター(環境省事業)
    目的 カワウの広域保護管理手法の普及と教育
    内容と成果 カワウのねぐら・コロニーの分布管理と,個体数管理について,それぞれ名古屋と千葉で研修会を開いた。ビニールテープを用いたねぐら除去手法や,エアライフルを用いたシャープシューティングといった最新技術を核とした研修で,関心を集めた。
  • 広域保護管理の推進
    委託主 環境省,関西広域連合
    目的 広域管理のための情報共有の推進と,カワウの生息状況や被害等の情報収集,生息状況調査と広域管理計画骨子の作成
    内容と成果 関東および中部近畿のカワウの生息状況等のデータのとりまとめとその分析や,ホームページを利用した情報発信と情報共有を支援した。中国四国地方における広域保護管理の検討のために,カワウの生息状況や被害状況などの情報収集や現地の行政と漁協に対するヒアリング調査を行なった。関西広域連合全域のカワウの生息状況を年4回調査し、その生息数や季節変化を明らかにした。また,広域保護管理計画の作成のため各種の知見を提供し,骨子の検討を前進させた。

    猛禽類との共存

  • 風力発電所でのバードストライク関連調査
    委託主 環境省
    目的 風力発電のバードストライクの問題を軽減するための基礎資料の収集
    内容と成果 バードストライクの危険の少ない陸上風力発電所の立地を選ぶ基礎資料として,渡り経路の調査および実際にバードストライクが起きているオジロワシ等のワシ類の行動調査を行なった。ワシ類は風車を認識して回避していること,事故が生じているのは必ずしも風車を認識しにくいような悪天候下ではないことなどがわかり,採食などで風車をみていないことがあり,そのような時に事故が生じるのだと考えられた。

    その他

  • 渡り鳥飛来状況調査
    委託主 環境省
    目的 鳥インフルエンザの防疫対策のためのガンカモ類の飛来状況の調査及び情報提供
    内容と成果 16箇所の調査地で9月から翌年5月もしくは6月まで間,月3回の調査を実施し,取りまとめを行った。環境省の調査する23か所の国指定鳥獣保護区の調査結果の取りまとめを行い,上記の16箇所の調査地と併せて環境省のホームページに掲載した。
  • 知床海鳥調査
    委託主 環境省
    目的 ケイマフリを中心とした海鳥の現況と,観光船による採食の妨害の共存策を検討する
    内容と成果 知床の海鳥の分布状況とその季節変化を把握した。観光船による影響が考えられる事象について明らかにした。


自然環境の改善の立案提言事業

  • 本年度は実施せず

自然環境保全と調査研究についての普及啓発事業

 本プロジェクトは全国的な調査を担うアマチュア研究者を育成することを目的に実施しています。そのために以下の活動を行なうとともに,船舶レーダーを使った調査の研修会も実施しました。

  • 研究集会の開催
    研究例会(研究集会の簡易版)を2011年8月にツバメについて,11月にガンカモについて,4月にツグミについて開催した。また鳥学講座を鳥学会と共催で2011年12月に「論文の書き方」について開催し,1月にGIS講座を開催した。また,モニタリングサイト1000の事業の中での集会を森林について6か所,シギチドリ,ガンカモについてそれぞれ1か所で開催した。
  • 調査研究支援プロジェクト
    調査研究のプランが20件集まり,審査によってこの中から10件の支援先プランを選定した。このリストをもとに寄付を募り,183票の投票と58万6千円の寄付が得られた。この寄付額の8割を得票数に応じて支援先に分配した。
  • ホームページの開設
    調査プロジェクトの内容や結果をホームページに随時掲載した。
  • ニュースレターの発行
    ニュースレターを毎月1号,計12号を発行した.各号の概要版はニュースメールとしてテキストで配信し,ホームページにも公開した。
  • 研究誌の発行
    12本の論文を掲載した第7巻を2011年12月に発行した.また第8巻の論文を現時点で6本掲載,査読中の論文が2本ある。科学雑誌の公開システムJ-stage上の論文への月間アクセス数は日本鳥学会誌を超えるなど,ある程度,論文雑誌としての市民権は得つつあり,投稿数も徐々にだが増えてきている。
  • 参加型調査『みにクル』の開催
    狭山公園,宇都宮中央公園において,定期的な鳥類調査をおこなった。また,不定期に各員が担当する調査において参加者を募り調査を体験してもらった。

損益計算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2011年7月1日   至 2012年6月30日 (単位:円)


事業損益の部
収入の部
会費収入
1,092,000
 
寄付金収入
2,150,925
 
基礎情報の収集解析事業
40,937,160
 
保全施策の立案提言事業
33,210,162
 
自然環境の改善の立案提言事業
0
 
普及啓発事業 0   
民間助成金 1,387,000
その他 2,997,775  
収入合計   81,775,022
支出の部
【研究費】    
基礎情報の収集解析事業
17,205,006
 
保全施策の立案提言事業
20,294,938
 
自然環境の改善の立案提言事業
0
 
普及啓発事業
549,395
 
独自研究費
412,294
 
一般管理費
35,066,057
 
支出合計  
73,527,690
当期収支  
8,247,332
前期繰越損益  
21,481,230
次期繰越損益  
29,728,562



会費・寄付金収支決算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2011年7月1日   至 2012年6月30日(単位:円)


収入  
 会費収入 1,092,000
 寄付金収入(一般) 1,570,925
 寄付金収入(研究助成) 580,000
 助成金収入 1,387,000
 雑収入 121,650
支出
 
 普及啓発事業363,215
 寄付金支出(研究助成) 549,395
 助成金支出 1,268,426
 独自調査費 49,079
 一般管理費等 1,579,130
来期繰越金 942,330