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2010年度バードリサーチ活動報告

特定非営利活動法人 バードリサーチ


鳥類や自然環境の基礎情報の収集解析事業

本プロジェクトでは,保全に利用することのできる基礎的な情報を収集,データベース化することを目的に活動しています。目的が一致している環境省のモニタリングサイト1000に関わるとともに,モニタリングサイト1000では漏れてしまうような身近な場所での情報収集をすすめています。また,長期間のモニタリングに不可欠と考えている自動的な情報収集の手法開発を,また特定の種にしぼった情報収集としてツバメやヒクイナ,ミヤマガラス等の調査をすすめています。

    鳥類のモニタリング

  • モニタリング事業
    委託主 環境省,自主事業ほか
    目的 全国の鳥類相の変化をモニタリングできる体制を構築し,実施する。変化の原因を明らかにし,保全に役立てる。
    内容と成果 環境省のモニタリングサイト1000の受託を受け,陸生鳥類,ガンカモ類およびシギチドリ類についての調査の運営およびデータの蓄積や解析を行なった。また里山の調査についても検討委員として関わった。モニタリングサイト1000でモニタリングされていない都市域については,独自のベランダバードウォッチでモニタリングを継続した。各地で行なわれている探鳥会等の情報もモニタリングに役立てるため,データベースフィールドノートを運営し,個人や日本野鳥の会の支部,観察団体の観察記録のデータベース化についてのサポートも行なった。
  • 冬鳥ウォッチ
    委託主 自主事業
    目的 冬鳥の生息状況の長期的なモニタリングを行なう
    内容と成果 年変動,地域差の大きい冬鳥の長期的な変化をつかむために,2006年からスタートし,今年で5年目となった。この冬は,マヒワが多く,アトリが少なかったことなどがわかった。

    種を対象としたモニタリング

  • ツバメかんさつ全国ネットワーク
    委託主 自主事業
    目的 ツバメの飛来時期、巣場所、ヒナの巣立ち数などを調べて、気候・環境とツバメとの関係を調べる。さらに、エントリーレベルの調査として調査参加者の裾野を広げる役割がある。
    内容と成果 ツバメの初認調査では,今年は調査を始めた2005年以降で最も飛来が遅かった。一方で巣立ち時期は例年よりもやや遅い程度であり,両方の時期に関連はなさそうだった。それぞれの要因について,時間的・地域的な気温との関連を解析していきたい。
  • 分布変化の調査
    委託主 自主事業
    目的 減少しているヒクイナとコサギ,分布拡大している外来鳥やリュウキュウサンショウクイの生息状況とその変化の有無,原因を明らかにする。
    内容と成果 外来鳥の調査を昨年度の5月より開始した。フィールドノートのデータベースからの情報等あわせると,おおまかな外来鳥の分布はわかる程度の情報は集まった。この調査のためにつくった入力システムを発展させて,その他の鳥の分布調査ができるようにしていく予定である。また,リュウキュウサンショウクイについては,文献調査とあわせてとりまとめ発表した。
  • 子雀ウォッチ
    委託主 自主事業
    目的 減少しているといわれているスズメの減少要因を明らかにする。
    内容と成果 1つがいあたりの巣立ちヒナ数,地域のヒナの割合を調査した。全国各地から情報が集まり,都市部の繁殖成績が低いこと,畑が多すぎても繁殖成績がわるそうなことなどが見えてきた。
  • シギチドリレーダー調査
    委託主 港湾技術研究所
    目的 レーダーによって干潟のシギチドリの分布を,モニタリングできるか検討する。
    内容と成果 熊本県不知火干潟で,シギチドリの行動をレーダーで捉えられるか調査を行った。干潟上におりたシギチドリを捉えることは困難だが,昼間,飛び立ったシギチドリの群れは行動を追跡することが可能だった。降りた場所と飛び立った場所から,経時的に干潟のシギチドリの分布を推測することが可能と思われる。

    生物季節のモニタリング

  • 季節前線ウォッチ
    委託主 自主事業
    目的 だれでも識別できる鳥の生物季節情報を収集し,温暖化の影響など明らかにする。
    内容と成果 春はウグイス,ヒバリ,ツバメ,アオバズク,オオヨシキリ,ホトトギス,カッコウ,カルガモの情報を集め,秋はモズ,ヒヨドリ,ジョウビタキ,ツグミの情報を集めた。暖かい地域ほど夏鳥の飛来やさえずりの開始時期が早い地域的な傾向は認められたが,年による寒暖と飛来時期の傾向は,認められるものの明確ではなかった。更なる情報蓄積が必要と思われる。
  • キビタキ初認調査
    委託主 自主事業
    目的 キビタキの初認時期や,標高と初認の時期の関係を明らかにする。
    内容と成果 キビタキの初認の記録を集めた。その結果,南から順に渡来することがはっきりとわかった。3年目の調査だが,1年目2年目とは4月中旬の渡来の確認地点が少なかったが,全体として渡来時期に目立った変化はみられなかった。
  • ミヤマガラス初認調査
    委託主 自主事業
    目的 ミヤマガラスの渡来ルートやそのパターンを明らかにする。
    内容と成果 ミヤマガラスの初認の記録を集めた。今年も昨年に引き続き,会員のほか,タカの渡りを観察している人たちにも呼び掛け,渡りと思われる飛翔を観察した場合に,その方向を記録してもらうようにした。今年も,渡りルートについては昨年までに得られた結果を裏付ける結果が得られた。


鳥類や自然環境の保全施策の立案提言事業

 本プロジェクトは人と鳥類の共存のために,その手法を構築していくことを目的としています。現在,人との軋轢のある種としてカワウを,希少種として猛禽類をモデルケースとして事業を実施しています。

カワウ基礎情報の収集

  • カワウの分布調査
    委託主 特定非営利活動法人行徳野鳥観察舎友の会(千葉県事業),自主事業
    目的 カワウの生息状況の変化を把握し,管理手法などの提言を行なう。
    内容と成果 関東地方の個体数はあまり変わらない。ねぐら箇所数はまだ増加傾向。山間部のダム湖などへの進出が目立つようになってきた。住宅地に隣接したねぐらやゴルフ場内のねぐらにおける,適切な管理のための体制作りと手法の提言をおこなった。
  • カワウの移動調査
    委託主 自主事業
    目的 移動の解明と広域的管理への活用
    内容と成果 東京湾沿岸にある3つのコロニーで 321羽にカラーリングの標識を装着し,観察データを712件収集した。東京湾にある4つのコロニーから巣立ったカワウの発見場所に違いがみられ,緩やかな住み分けがあるらしいことが分かってきた。

    カワウ保護管理推進事業

  • カワウの広域管理と狩猟モニタリング
    委託主 自然環境研究センター(環境省事業)
    目的 カワウの広域保護管理の普及と支援,狩猟鳥化による影響把握調査手法の開発
    内容と成果 中国四国地方における広域保護管理の普及と支援のために,岡山市内で現地視察,講義,ワークショップからなる研修会を開いた。狩猟の影響について,漁協へのアンケートから得られた被害状況をもとに被害軽減の効果を,また,狩猟解禁前後の現地調査から狩猟がカワウに与える影響を年齢別に分析した。

    猛禽類との共存

  • 風力発電所でのバードストライク関連調査
    委託主 環境省,北海道大学(環境省事業)
    目的 風力発電のバードストライクの問題を軽減するための基礎資料の収拾
    内容と成果 バードストライクの危険の少ない陸上風力発電所の立地を選ぶ基礎資料として,渡り経路の調査および実際にバードストライクが起きているオジロワシ等のワシ類の行動調査を行なった。この成果はマニュアルとして公開された。また,今後建設が検討されている洋上風力発電におけるバードストライクの危険を検討するために長崎県池島で現地調査を行なった。多くの海鳥は風車より低い位置を飛ぶことが多く,比較的危険性は低く,大型カモメ類や猛禽類は危険性が高そうであることが見えてきた。

    その他

  • 渡り鳥飛来状況調査
    委託主 環境省
    目的 鳥インフルエンザの防疫対策のためのガンカモ類の飛来状況の調査及び情報提供
    内容と成果 16箇所の調査地で9月から翌年5月もしくは6月まで間,月3回の調査を実施し,取りまとめを行った。環境省の調査する23か所の国指定鳥獣保護区の調査結果の取りまとめを行い,上記の16箇所の調査地と併せて環境省のホームページに掲載した。
  • 知床海鳥調査
    委託主 環境省
    目的 ケイマフリを中心とした海鳥の現況と,観光船による採食の妨害の共存策を検討する
    内容と成果 知床の海鳥の分布状況とその季節変化を把握した。観光船による影響が考えられる事象について明らかにした。
  • 希少鳥類生息分布調査
    委託主 環境省
    目的 希少鳥類の生息分布情報を収集し,鳥獣保護区等との重なりを調査する。
    内容と成果 希少鳥類の分布情報と鳥獣保護区等の情報をGIS化し,両者の重なりについて分析を行ない,種ごとの保護状況を取りまとめた。

自然環境の改善の立案提言事業

  • 本年度は実施せず

自然環境保全と調査研究についての普及啓発事業

 本プロジェクトは全国的な調査を担うアマチュア研究者を育成することを目的に実施しています。そのために以下の活動を行なうとともに,船舶レーダーを使った調査の研修会も実施しました。

  • 巣箱プロジェクト
    委託主 自主事業
    目的 身近な野鳥の繁殖生態調査の普及啓発と、全国的な繁殖状況の把握
    内容と成果 市民から,巣箱を使用した野鳥の繁殖状況を募集し,結果をホームページに掲載した。また,情報提供の呼びかけには日本野鳥の会販売部に協力してもらい,野鳥の会で販売した巣箱に本事業の宣伝チラシを同封してもらった。
  • 研究集会の開催
    モニタリング調査解析編として,山中湖で講義と実習をまじえた研究集会を実施した。この集会では新企画としてustreamを使ったライブ配信も行ない40名以上の視聴者が参加した.また,モニタリングサイト1000の陸生鳥類,シギチドリ,ガンカモ類それぞれ各地で講習会や調査員集会を実施した。
  • ホームページの開設
    調査プロジェクトの内容や結果をホームページに随時掲載した。
  • ニュースレターの発行
    ニュースレターを毎月1号,計12号を発行した.各号の概要版はニュースメールとしてテキストで配信し,ホームページにも公開した。
  • 研究誌の発行
    11本の論文を掲載した第6巻を2010年12月に発行した.
  • 参加型調査『みにクル』の開催
    狭山公園,宇都宮中央公園において,定期的な鳥類調査をおこなった。また,不定期に各員が担当する調査において参加者を募り調査を体験してもらった。

損益計算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2010年7月1日   至 2011年6月30日 (単位:円)


事業損益の部
収入の部
会費収入
1,100,910
 
寄付金収入
1,598,360
 
基礎情報の収集解析事業
49,898,920
 
保全施策の立案提言事業
33,072,950
 
自然環境の改善の立案提言事業
0
 
普及啓発事業 102,510   
民間助成金 0
その他 971,799  
収入合計   86,745,449
支出の部
【研究費】    
基礎情報の収集解析事業
27,172,691
 
保全施策の立案提言事業
16,764,319
 
自然環境の改善の立案提言事業
0
 
普及啓発事業
912,592
 
独自研究費
11,719
 
一般管理費
36,765,558
 
支出合計  
81,626,879
当期収支  
5,256,326
前期繰越損益  
16,224,904
次期繰越損益  
21,481,230



会費・寄付金収支決算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2010年7月1日   至 2011年6月30日(単位:円)


収入  
 会費収入 1,100,910
 寄付金収入 1,598,360
 雑収入 102,510
支出
 
 普及啓発事業912,592
 独自調査費 11,719
 一般管理費等 1,714,901
来期繰越金 162,568