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2009年度バードリサーチ活動報告

特定非営利活動法人 バードリサーチ


鳥類や自然環境の基礎情報の収集解析事業

本プロジェクトでは,保全に利用することのできる基礎的な情報を収集,データベース化することを目的に活動しています。目的が一致している環境省のモニタリングサイト1000に関わるとともに,モニタリングサイト1000では漏れてしまうような身近な場所での情報収集をすすめています。また,長期間のモニタリングに不可欠と考えている自動的な情報収集の手法開発を,また特定の種にしぼった情報収集としてツバメやヒクイナ,ミヤマガラス等の調査をすすめています。

    鳥類のモニタリング

  • モニタリング事業
    委託主 環境省,自主事業ほか
    目的 全国の鳥類相の変化をモニタリングできる体制を構築し,実施する。変化の原因を明らかにし,保全に役立てる。
    内容と成果 環境省のモニタリングサイト1000の受託を受け,陸生鳥類,ガンカモ類およびシギチドリ類についての調査の運営およびデータの蓄積や解析を行なった。また里山の調査についても検討委員として関わった。モニタリングサイト1000でモニタリングされていない都市域については,独自のベランダバードウォッチでモニタリングを継続した。各地で行なわれている探鳥会等の情報もモニタリングに役立てるため,データベースフィールドノートを運営し,個人や日本野鳥の会の支部,観察団体の観察記録のデータベース化についてのサポートも行なった。
  • 冬鳥ウォッチ
    委託主 自主事業
    目的 冬鳥の生息状況の長期的なモニタリングを行なう
    内容と成果 年変動,地域差の大きい冬鳥の長期的な変化をつかむために,2006年からスタートし,今年で4年目となった。この冬は,マヒワが少なく,アトリは中部日本に極めて多かったが,東日本や九州では昨年と比べて少なかったことなどがわかった。

    種を対象としたモニタリング

  • ツバメかんさつ全国ネットワーク
    委託主 自主事業
    目的 ツバメの飛来時期、巣場所、ヒナの巣立ち数などを調べて、気候・環境とツバメとの関係を調べる。さらに、エントリーレベルの調査として調査参加者の裾野を広げる役割がある。
    内容と成果 従来から行ってきたツバメ日記やツバメ地図に加えて、道の駅・高速道路サービスエリアのツバメ調査を実施した。これは自宅にツバメの巣がない人も参加できることと、今後、企業などとのタイアップ事業に発展させるための準備を行うことを目的としている。約200カ所の道路施設から、ツバメの巣の情報が集まった。解析面では、ツバメ日記の記録から巣立ちのピークを調べたところ、今年は例年よりかなり巣立ちが遅いことが分かった。
  • 分布変化の調査
    委託主 自主事業
    目的 減少しているヒクイナとコサギ,分布拡大している外来鳥やリュウキュウサンショウクイの生息状況とその変化の有無、原因を明らかにする。
    内容と成果 ヒクイナとコサギの情報収集を継続した。新たに一昨年の総会で提案のあった外来鳥の調査を5月より開始した。フィールドノートのデータベースからの情報等あわせると,おおまかな外来鳥の分布はわかる程度の情報は集まった。この調査のためにつくった入力システムを発展させて,その他の鳥の分布調査ができるようにしていく予定である。また,リュウキュウサンショウクイの調査も開始した。現時点,アンケートでの情報は多くないので,文献調査と新たな呼びかけをしていく予定である。
  • 子雀ウォッチ
    委託主 自主事業
    目的 減少しているといわれているスズメの減少要因を明らかにする。
    内容と成果 4月よりスタート。1つがいあたりの巣立ちヒナ数,地域のヒナの割合を調査した。新聞に取り上げられたこともあり,各地から情報が集まっている。農耕地帯での繁殖成績が良さそうなことなどが見えてきているが,さらに情報収集を続ける予定である。

    生物季節のモニタリング

  • 季節前線ウォッチ
    委託主 自主事業
    目的 だれでも識別できる鳥の生物季節情報を収集し,温暖化の影響など明らかにする。
    内容と成果 春はウグイス,ヒバリ,ツバメ,アオバズク,オオヨシキリ,ホトトギス,カッコウ,カルガモの情報を集め,秋はモズ,ヒヨドリ,ジョウビタキ,ツグミの情報を集めた。暖かい地域ほど夏鳥の飛来やさえずりの開始時期が早い地域的な傾向は認められたが,年による寒暖と飛来時期の傾向は,認められるものの明確ではなかった。更なる情報蓄積が必要と思われる。
  • キビタキ初認調査
    委託主 自主事業
    目的 キビタキの初認時期や,標高と初認の時期の関係を明らかにする。
    内容と成果 キビタキの初認の記録を集めた。その結果,南から順に渡来することがはっきりとわかった。2年目の調査だが,1年目とは渡来時期に差はみられなかった。
  • ミヤマガラス初認調査
    委託主 自主事業
    目的 ミヤマガラスの渡来ルートやそのパターンを明らかにする。
    内容と成果 ミヤマガラスの初認の記録を集めた。今年も昨年に引き続き,会員のほか,タカの渡りを観察している人たちにも呼び掛け,渡りと思われる飛翔を観察した場合に,その方向を記録してもらうようにした。今年は西日本よりも東日本で渡来が早い傾向がみられた。


鳥類や自然環境の保全施策の立案提言事業

 本プロジェクトは人と鳥類の共存のために,その手法を構築していくことを目的としています。現在,人との軋轢のある種としてカワウを,希少種として猛禽類をモデルケースとして事業を実施しています。

    カワウ基礎情報の収集

  • カワウの分布調査
    委託主 国交省関東地方整備事務所 武蔵丘陵森林公園管理所,特定非営利活動法人行徳野鳥観察舎友の会(千葉県事業),自主事業
    目的 カワウの分布、個体数、営巣数、成幼比などの継続調査することで、カワウの生息状況の変化を把握し、動向を予測する。
    内容と成果 関東全体、千葉県、森林公園のいずれも、個体数は頭打ちになってきた。ねぐら箇所数はまだ増加傾向にあり、小さなねぐらが平野部全体に薄く広く分布している。
    ねぐらの管理対策に適した方法や時期、ねぐらの管理者等の連絡会の立ち上げなどの提言をおこなった。
  • カワウの移動調査
    委託主 自主事業
    目的 移動の解明と広域的管理への活用
    内容と成果 東京湾沿岸にある4つのコロニーで 628羽にカラーリングの標識を装着し,観察データを約900件収集した。2010年5月には、これまでの記録の中で最も遠い、青森県むつ市で行徳生まれのカワウが観察された。東京湾と伊勢三河湾の個体群のつながりを調べるため、中間に位置する浜名湖で捕獲した1羽を1年近くにわたり衛星追跡をしたが、この個体は浜名湖を離れなかった。

    カワウ保護管理推進事業

  • カワウの広域管理と狩猟モニタリング
    委託主 関東カワウ広域協議会,環境省,自然環境研究センター(環境省事業)
    目的 広域管理のための情報共有の推進と、狩猟鳥化による影響把握調査手法の開発
    内容と成果 関東カワウ広域協議会の事務局として、モニタリングデータなどの集積、広域一体的な対策のコーディネートをおこない、5年間の取りまとめをした。データセンター業務では,データベースへのデータの追加を行ない,過去5年間に実施した行政担当者向けの研修会の講演資料をホームページに公開した。狩猟の影響については、漁協へのアンケートから得られた被害状況をもとに被害軽減の効果を、また、狩猟解禁前後の現地調査から年齢別の狩猟がカワウに与える影響を分析した。

    猛禽類との共存

  • 希少猛禽類保護指針策定調査
    委託主 環境省
    目的 猛禽類保護指針の改訂を行なう
    内容と成果 イヌワシ,クマタカ,オオタカを中心とした希少猛禽類の保護指針の改訂作業を行なった。目視調査の難しいオオタカについては,巣の分布と土地利用状況をもとにしたあたらしい行動圏の解析手法を提案した。
  • 風力発電所でのバードストライク関連調査
    委託主 環境省,北海道大学(環境省事業)
    目的 風力発電のバードストライクの問題を軽減するための基礎資料の収拾
    内容と成果 陸上の発電所におけるバードストライクの危険の少ない立地を選ぶ基礎資料としての渡り経路の調査および実際にバードストライクが起きているオジロワシ等のワシ類の行動調査を行なった。この成果はまもなくマニュアルとして公開される予定である。また,今後建設が検討されている洋上風力発電におけるバードストライクの危険を検討するために長崎県池島で現地調査を行なった。多くの海鳥は風車より低い位置を飛ぶことが多く,比較的危険性は低く,大型カモメ類は危険性が高そうであることが見えてきた。

自然環境の改善の立案提言事業

  • 本年度は実施せず

自然環境保全と調査研究についての普及啓発事業

 本プロジェクトは全国的な調査を担うアマチュア研究者を育成することを目的に実施しています。そのために以下の活動を行なうとともに,船舶レーダーを使った調査の研修会も実施しました。

  • 巣箱プロジェクト
    委託主 自主事業
    目的 身近な野鳥の繁殖生態調査の普及啓発と、全国的な繁殖状況の把握
    内容と成果 市民から,巣箱を使用した野鳥の繁殖状況を募集した.また、横浜市立師岡小学校の「総合的な学習の時間」を支援し,児童に対して巣箱についての講義や巣箱掛け教室等を行った.
  • 研究集会の開催
    5周年の記念集会として,鳥の渡りと地球温暖化,スズメの全国の個体数の推計とその減少等についての講演会および懇親会を行った.また,モニタリングサイト1000の陸生鳥類,シギチドリ,ガンカモ類それぞれで各地で講習会や調査員集会を実施した。
  • ホームページの開設
    調査プロジェクトの内容や結果をホームページに随時掲載した。
  • ニュースレターの発行
    ニュースレターを毎月1号,計12号を発行した.各号の概要版はニュースメールとしてテキストで配信し,ホームページにも公開した。
  • 研究誌の発行
    9本の論文を掲載した第5巻を2009年12月に発行した.



損益計算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2009年7月1日   至 2010年6月30日 (単位:円)


事業損益の部
収入の部
会費収入
 955,000
 
寄付金収入
1,839,928
 
基礎情報の収集解析事業
45,442,345
 
保全施策の立案提言事業
29,784,326
 
自然環境の改善の立案提言事業
0
 
普及啓発事業 0   
民間助成金 0
その他 929,889  
収入合計   78,951,488
支出の部
【研究費】    
基礎情報の収集解析事業
31,109,076
 
保全施策の立案提言事業
15,155,767
 
自然環境の改善の立案提言事業
0
 
普及啓発事業
437,877
 
独自研究費
117,057
 
一般管理費
27,837,257
 
支出合計  
74,657,034
当期収支  
4,294,454
前期繰越損益  
12,951,950
次期繰越損益  
17,246,404



会費・寄付金収支決算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2009年7月1日   至 2010年6月30日(単位:円)


収入  
 会費収入 955,000
 寄付金収入 1,839,928
 雑収入 214,210
支出
 
 普及啓発事業437,877
 独自調査費 117,057
 一般管理費等 1,307,528
来期繰越金 1,146,676