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ベランダバードウォッチ2006年繁殖期 調査結果


 ベランダバードウォッチは2年目を迎え,8月現在で55名の方に参加していただき,55地点で調査が行なわれました。まだ,すべての方から調査結果をいただいたわけではありませんが,9月までに調査結果が寄せられた家での調査38地点,家のまわりの調査36地点をもとに,今年の繁殖期の結果についてまとめてみました。

記録された鳥

 今年の4月から8月までに合計109種が記録されました(表1)。4月も調査対象期間にしたため,記録された種にはレンジャク類やツグミ,シロハラ,ジョウビタキなどの冬鳥も含まれました。また,調査地が多岐にわたっているために,カモ類やシギ・チドリ類,サギ類などの水辺の鳥も記録されています。記録種数は,2005年の繁殖期には104種でしたので,2006年もほぼ同様の種数が記録されたことがわかります。また,2005年の冬期では94種で,やはり繁殖期の方が多く記録されましたが,これは繁殖期の方が冬鳥や渡り途中の鳥が記録されたために冬期より多く記録されたものと思われます。

表1.2006年繁殖期に記録された鳥のリスト
1 カイツブリ 38 フクロウ 75 キクイタダキ
2 カワウ 39 ヒメアマツバメ 76 セッカ
3 ゴイサギ 40 アマツバメ 77 キビタキ
4 ササゴイ 41 ヤマセミ 78 オオルリ
5 アマサギ 42 カワセミ 79 サンコウチョウ
6 ダイサギ 43 アオゲラ 80 エナガ
7 チュウサギ 44 ヤマゲラ 81 ハシブトガラ
8 コサギ 45 アカゲラ 82 コガラ
9 アオサギ 46 コゲラ 83 ヒガラ
10 マガモ 47 ヒバリ 84 ヤマガラ
11 カルガモ 48 ツバメ 85 シジュウカラ
12 コガモ 49 リュウキュウツバメ 86 ゴジュウカラ
13 ヒドリガモ 50 コシアカツバメ 87 メジロ
14 ハシビロガモ 51 イワツバメ 88 ホオジロ
15 ミサゴ 52 キセキレイ 89 カシラダカ
16 トビ 53 ハクセキレイ 90 アオジ
17 オオタカ 54 セグロセキレイ 91 アトリ
18 ツミ 55 ビンズイ 92 カワラヒワ
19 ハイタカ 56 シロガシラ 93 マヒワ
20 サシバ 57 ヒヨドリ 94 ウソ
21 ハヤブサ 58 モズ 95 イカル
22 チョウゲンボウ 59 キレンジャク 96 シメ
23 キジ 60 ヒレンジャク 97 ニュウナイスズメ
24 バン 61 コマドリ 98 スズメ
25 コチドリ 62 シマゴマ 99 コムクドリ
26 イカルチドリ 63 ジョウビタキ 100 ムクドリ
27 ケリ 64 ノビタキ 101 カケス
28 キアシシギ 65 イソヒヨドリ 102 オナガ
29 イソシギ 66 トラツグミ 103 カササギ
30 セグロカモメ 67 クロツグミ 104 ハシボソガラス
31 コアジサシ 68 アカハラ 105 ハシブトガラス
32 キジバト 69 シロハラ 106 コジュケイ
33 アオバト 70 ツグミ 107 ドバト
34 ズアカアオバト 71 ヤブサメ 108 ホンセイインコ
35 カッコウ 72 ウグイス 109 ガビチョウ
36 ホトトギス 73 オオヨシキリ
37 アオバズク 74 センダイムシクイ    

 次に,記録率の高い種や個体数の多い種は,スズメ,ヒヨドリ,ツバメ,ハシボソガラス,ムクドリ,ハシブトガラスといった鳥たちで,家のまわりの調査,家での調査とも同じでした。

2006年繁殖期における家の周りの調査と家での調査の出現率と個体数の上位種。家のまわりの調査は,個体数ではなく,概数で示しているので,個体数ではなく,個体数ランクの平均値を示している。ランク1:時々いる,2:1〜2羽,3:3〜5羽,4:6〜20羽,5:21〜99羽,6:100羽以上

家での調査の2005年と2006年の比較

 家での調査の結果をもとに,上位10種の記録率と個体数を2005年の結果と比べると,両年で違いがあることがわかります(図4,5)。出現率は,すべての種で2006年の方が2005年より高いことがわかりました。
 特に,ツバメ,キジバト,ハシボソガラス,ドバト,カワラヒワで顕著でした。個体数も全体的に2006年の方が2005年より多く,出現率を反映するように,ツバメ,ハシボソガラス,キジバト,ドバト,カワラヒワで顕著にみられました。逆に,スズメは今年の方が少なく記録されました。こうした年による違いは,調査地が昨年と多少違うためなのでしょうか。それとも天候などの違いによるものなのでしょうか。このあたりは,さらに何年も続けて調査をすることで,見えてくるかもしれません。

 

家での調査と家のまわりの調査の比較

 記録率の高い10種に昨年記録率の高かったコゲラとハクセキレイを加えた12種の家のまわりの調査と家での調査の記録率を比較すると,両調査間で若干その記録率に違いがありました。やはり,広い範囲を観察する家のまわりの調査のほうが,家での調査よりすべての種で記録率が高いことがわかります。昨年の報告でも紹介しましたが,両調査間で記録率の違いが著しい種がありました。すなわち,ハシボソガラス,カワラヒワ,キジバト,ドバト,コゲラ,ハクセキレイです。調査地点は2006年と2005年で多少異なっていましたが,大変興味深いことに,両調査での記録率の違いの大きい種は,両年でほぼ同じでした。2年続けて同じ傾向が見られたことは,単なる偶然ではなく,やはりそれぞれの種の生活スタイルと深く関係しているものと思われます。コゲラは行動圏が広いことで,ほかの種は農耕地で採食する種ですので,観察範囲の限られる家での調査では生息を確認しづらいのでしょう。

季節変化

 家のまわりの調査結果から,記録率と個体数の多い8種のそれぞれの季節変化を種ごとにまとめてみました(図6)。これをみると多くの種の出現率と個体数は,それぞれ似たような季節変動をしています。やはり,記録率が高いと個体数も多く記録されるようです。
 個体数は,多くの種で5月中旬から下旬に少なく,7月に増加し,その後8月に入ると再び減少する傾向が見られました。また,ハシボソガラスやハシブトガラス,シジュウカラでは8月中旬に著しい減少がありました。このような個体数の増減は,それぞれの種の繁殖活動の時期ときわめて良く一致しています。増加の時期は巣立ちビナを連れた家族群が記録されるため,減少している時期は抱卵や巣内育雛時期で巣内にいる時間が長いため目撃される個体数が少ないものと思われます。増減の時期が種によって多少異なるのは,おそらく種によって繁殖の時期や回数が異なるためと思われます。たとえば,スズメでは4月から繁殖を開始しますが,ヒヨドリでは5月から繁殖にはいります。そのためスズメの方が若干早く増減が始まっているようにみえます。なお,ヒヨドリでは春先の個体数の変動は渡りと関係があるかもしれません。また,8月中旬の急激な減少は換羽時期にあたるために,目立たなくなるのでしょう。この時期,関東地方では換羽途中のぼろぼろのヒヨドリやカラス類を観察します。さらに,ツバメでは8月下旬になると出現率も個体数も急激に減少しますが,渡りのために人家付近から河川などへ集まるためと思われます。

 今回,ご報告しましたように,ベランダバードウォッチのような簡単な調査でも,鳥たちの生活スタイルの一部を反映するデータが得られつつあります。しかし,ベランダバードウォッチのような調査は,同じ場所で長期間続けることで,記録率や個体数の変化がみえてくる調査です。気長に続けていきたいと考えていますので,今後ともご協力のほど宜しくお願いいたします。

 2006年夏の調査では,以下の皆様に調査にご協力いただきました(10月7日時点 敬称略 順不同)。ご協力ありがとうございました。荒木廣治,安田耕治,加藤晴弘,岩見 勝,吉家奈保美,吉田邦雄,吉野智生,吉邨隆資,宮崎謙二,金子はる子,桂千恵子,原口 譲,原 靖之,高野敏枝,高羽みどり,高橋賢政,高橋昌也,黒沢令子,今森達也,坂田俊平,三田長久,山崎 智,山本征嗣,重本珊志郎,小荷田行男,小関幸子,小室智幸,小池登志雄,上西庸雄,植田睦之,新井和雄,神山和夫,成田雅彦,斉藤けい子,石丸英輔,石田 健,川端一彦,大槻公彦,大内ひとみ,中村宏雄,中村暎枝,猪飼幹太,長嶋宏之,田中葉子,田中利彦,藤本洋子,内野 惠,内野かおる,白須文康,白石健一,飯泉 仁,平野敏明,木下香菜,澤村信之,齋藤映樹



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