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冬鳥ウォッチ  ― 日本で越冬する小鳥の群れの調査―

冬鳥ウォッチ2007/08年冬 結果報告
− 昨年よりもマヒワとアトリの多い冬でした −

 昨年から始まった冬鳥ウォッチも二冬目を迎えました。当初、あまり多くの情報が寄せられておらず,やや心配したのですが、3月に入って続々と情報が届きました。ご協力ありがとうございました。以下に、4月10日までに寄せられた記録をもとに、今冬(2007/08年冬)の冬鳥たちの飛来状況をご報告いたします。

記録状況

 今年は、北は北海道から南は鹿児島県までの23都道府県、41人の方から合計75件の情報が寄せられました(図 1)。その結果、今年も調査対象としているカシラダカ、マヒワ、アトリ、ハギマシコ、イスカ、カワラヒワの全種が記録されました。件数が多かったのは、やはりカワラヒワ。47件の情報が寄せられました。次いでカシラダカ34件、マヒワ27件、アトリ20件、ハギマシコ7件の順で、イスカは今年も少なく3件のみでした(図2)。また、まったく記録されなかった調査地が 2件ありました。なお、これらの記録には、一部11月や 3月中旬までの記録が含まれています。

図1 調査地の分布


図2 2007年冬期における各種の記録件数(2008年4月10日現在)


個体数ランク別件数

 図3に、記録された各種の個体数ランク別の記録件数をまとめました。また、図4には、記録件数が少ないハギマシコとイスカを除いた 4種の個体数ランクの昨年の記録との比較を示しました。

図3 2007年冬期における各種の個体数の記録状況



図4 2006年冬期と2007年冬期における主な種の個体数ランクの比較.
  記録があるものを対象とし、個体数0は含めていない。



 カシラダカは、1〜20羽の調査地が最も多く23件(68%)で、次いで21〜50羽が8件でした。昨年は一番個体数の多い調査地でも51〜100羽でしたが、今冬は101〜200羽の調査地も1件ですが記録されました。ただ、図4をみると、51〜100羽の記録の割合は、昨冬のほうが多いことがわかります。
 マヒワは、21〜50羽の調査地が最も多く10件(37%)でした。次いで、1〜20羽が7件、51〜100羽と101〜200羽が各4件あり、201羽以上の大きな群れも2件ありました。101羽以上の大きな群れは、おもに東北地方で記録されました。昨年と比較すると、1〜20羽の記録の割合が減った一方、51〜100羽や101〜200羽、201羽以上の割合が増加し,越冬個体数が多いことが伺えます。
 アトリは、昨年同様に 1〜20羽の小さな群れが記録された調査地が11件(56%)と多く、次いで21〜50羽が 4件でしたが、201羽以上の調査地が 3件報告され、そのうちの1件は1000羽以上の群れ(鳥取県)でした。大きな群れは、昨年と同様に石川県や福井県、鳥取県などから報告されました。昨年と比較すると、マヒワと同様に 1〜20羽の記録が減少し、その代わりに21〜50羽や51〜100羽、201羽以上が増加しています。
 ハギマシコは、7件と情報件数は少なかったのですが、個体数ランクでは 1〜20羽から201羽以上まで、すべてのランクで記録されました。最多個体数は宮城県で300羽が記録されました。昨年は、87羽が最多記録個体数でしたので、今年の冬の方が渡来数が多かった可能性があります。ハギマシコの記録件数が少ないのは、今回調査対象としたほかの種と異なり、生息環境が山地帯のガレ場や林道脇の法面、農耕地とやや限られているためと考えられます。
 イスカは、3件で1〜20羽と21〜50羽の群れが北海道で,繁殖の記録が青森よりよせられました。また、長崎県の対馬でも1月にイスカの可能性の高い 5羽が観察されました。
 カワラヒワは、個体数が最も多かったのは 1〜20羽で27件(57%)、次いで21〜50羽が11件、51〜100羽が8件でした。101〜200羽の群れも1件ですが報告されました。こうした記録状況の傾向は、1〜20羽がやや多く、21〜50羽がやや少ないものの、昨年とほぼ同じでした。

 以上のように、この冬はマヒワとアトリ(ともするとハギマシコも)が昨年より多く飛来した冬と言えそうです。特に、マヒワでは大きな群れは一部の地域で記録されただけですが、50羽以下の群れは広い範囲で記録されました。また、アトリは20羽以下の群れが多かったのですが、北海道や東北地方、関東、近畿、九州地方と広い範囲で記録され,しかも、1000羽を超える群れも記録されました。したがって、「当たり年」というには?がつきますが、「ちょい当たり年」程度には言えるのではないでしょうか。一方、カワラヒワやカシラダカは、情報件数が多いものの、群れはさほど大きくなく21〜50羽までが記録の大半を占めました。この傾向は、昨年とあまり違いがありませんでした。これらの種は、越冬期にはアトリのような大きな群れになることは少なく、しかも飛来数も年による変動があまりないのかもしれません。これらのことは、今後の冬鳥ウォッチでさらにはっきりとみえてくるものと思われます。
 ところで、今年もイスカは情報件数は 3件で,ある程度の規模の群れは北海道のみで記録されたのみでした。いつ大きな群れが飛来するのでしょうか。楽しみでもあり、もう大きな群れは飛来しないのではないかという不安も頭を過ぎります。来年以降に期待しましょう。
 最後に、対象種ではありませんが,今回、ご報告いただいたなかに、ベニヒワの大きな群れの記録がありました。東北地方や北海道で300羽を超える群れが報告されました。関東以南では報告されませんでしたが、今冬は一部の地域ではベニヒワの当たり年だったようです。また,シメが多かったという情報も何人かの方からいただきました。バードリサーチで別に行なっているベランダバードウォッチの結果からは,例年に比べてシメの記録率が高いことがわかっています。

 冬鳥ウォッチは来年以降も続けますので、ぜひ、ご協力ください。特に、図1の情報のない県にお住まいの方は宜しくお願いいたします。末尾ながら、以下にご協力いただきました皆様のご芳名を記してお礼に代えさせていただきます。

 東 淳樹、阿部誠一、石井秀憲、石田 健、石田スーザン、井灘志げ子、井上賢三郎、井上将英、今森達也、鐵輪武郎、金子はる子、金子凱彦、神永 功、川崎康弘、木村有紀、黒沢令子、黒田治男、小林和也、小林俊子、小堀脩男、斉藤けい子、齋藤映樹、佐原雄二、高橋邦年、武田光正、田中芳昭、堤 朗、永井健介、長嶋宏之、野中 純、花房ゆかり、林 吉彦、平野敏明、藤波不二雄、前田稔夫、又野淳子、松田道生、三橋 立、宮本久美子、吉邨隆資、渡辺美郎の各氏(五十音順)。

とりまとめ 平野敏明