バードリサーチ ニュース

2009年2月号 (Vol.6 No.2)

 
【 もくじ 】

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1.◆活動報告◆ 再生可能エネルギー推進とバードストライクの危険軽減
2.◆生態図鑑◆ オオワシ
3.◆論文紹介◆ 日本にスズメは何羽いるのか?
4.◆活動報告◆ モニ1000集会の報告 国際会議とシギチドリ調査交流会
5.◆図書紹介◆ オオタカの生態と保全
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【 概 要 】
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1.◆活動報告◆ 再生可能エネルギー推進とバードストライクの危険軽減
            ~タカの渡り情報募集~
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○温暖化抑制と事故軽減を同時に
 世界的な問題になっている温暖化対策として,また,いつかはなくなる化石燃料の代替エネルギーとして,再生可能エネルギーへの転換は不可欠になってきています.太陽光発電や地熱発電などの中でも,既にビジネスモデルができあがっており,設備コストも比較的安いなど,現時点で最も有望な手法が風力発電です.しかし一方で,風車に鳥が衝突する問題も生じています.北海道では2004年から2008年のあいだに少なくとも12羽のオジロワシの衝突死が確認されています.
 風力発電の推進と同時に,このような鳥の衝突の問題を小さくするためにはどのようなことをしたら良いでしょうか? 風力発電施設の設置地域を選定,検討する際に,衝突の危険の高い場所を避け,また鳥が視認しやすい風車を建てることが有効な方法のひとつです.そこで,環境省は2007年度から,これらのことを実現するための情報を整備し,風力発電の推進と野生生物保護との両立を目指す事業を実施しています.バードリサーチもその一部を請け(日本鳥類保護連盟との共同実施事業),調査や情報の収集をしています.

○1日の最大通過数による渡り状況の評価
 日鳥連とバードリサーチが担当していることのひとつは,各種鳥類の渡り地図作りです.特にタカ類に力を入れています.タカの渡りを観察している方の情報を全国から集めて地図化することで渡り経路が見えてくるのではないかと考え,タカの渡り全国ネットワークや日本野鳥の会の協力を得て,各地からの情報と文献資料を合わせ地図化を試みています.
 タカの渡りの記録には場所によって,毎日調査しているものから,数日しか調査していないものまで様々あります.毎日調査している場所の記録をもとに検討すると,一番多くの渡りが観察された日の羽数(最大通過数)で,その場所の渡りの規模をある程度表現できることがわかりました.つまり,毎日調査していなくても,渡りの最盛期にそこそこ調査していれば,その場所の渡りの規模を評価できるということです.そこで,最大通過数を指標に地図化を進めています.

○情報収集へのご協力お願いします!
 タカの渡りの調査をされたことのある方,またこれからする予定のある方,この情報収集にご協力いただけませんか? 渡りの盛んな時期に5日程度の調査がされている場所の情報が良いのですが,数日だけの情報でも参考資料として役に立ちます.情報をご提供いただける方は,植田( mj-ueta@bird-research.jp )までメールでお知らせください.皆様のご協力お待ちしています.
【植田睦之】

◆その他掲載記事
 ・見えてきた渡りの経路

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2.◆生態図鑑◆ オオワシ
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○英名:Steller's Sea Eagle   学名:Haliaeetus pelagicus
○分類:タカ目 タカ科
 
○鳴き声
 ねぐらの森や流氷上から,カッ,カッ,カッ,カッと鳴き声が聞こえる.オジロワシによく似るが,オオワシの方がやや濁った太い声,オジロワシはより乾いた声で鳴く.

○分布
 極東ロシア,日本,中国北部,朝鮮半島に分布.コリヤーク地方南部,カムチャツカ半島,アムール川下流域,シャンタルスキー諸島,サハリン北部,マガダン地方やハバロフスク地方沿岸地域で繁殖する.冬期は北海道,本州北部,カムチャツカ半島南部,千島列島などで越冬し,ごく少数が中国北東部や朝鮮半島,西日本まで南下する.総個体数は5000~7000羽と推定され,北方四島を含む我が国での越冬数は2000~2500羽と推定される.

○繁殖システム
 一夫一妻で繁殖する.繁殖期は地域による違いがある.

○抱卵・育雛期間
 抱卵期間は1~1ヶ月半.ヒナの孵化は5月中旬から6月中旬である.孵化したヒナは灰色の綿羽につつまれており,親鳥が巣に運ぶ魚類や鳥類を餌に育つ.巣に運ばれる餌はアムール川下流域ではカワカマスなどの魚類が80%を占め,鳥類は約10%である.カムチャツカとサハリンではワカサギやタラなどが巣内のヒナに運ばれる.幼鳥は7月末には親の1/2から2/3の大きさにまで育ち,普通8月に巣立つが9月上旬に巣立つこともある(Lobkov & Neifel'dt. 1986).

○食物の変化と分布の変化
 オジロワシ・オオワシ合同調査グループの調査などから,北海道の越冬地では越冬分布の長期的な変化が見られる.1980年代半ばから1990年頃までには羅臼沿岸に9割以上のオオワシが集中していた.これは羅臼沿岸で操業するスケトウダラ刺網漁で網から外れた浮魚に多くのオオワシが集中していたためである.90年代に入ってスケトウダラ漁獲量は急減し最盛期の1割にまで減少した.これに伴い羅臼沿岸に集まるオオワシも減少し,道東や北海道各地に分散した.増加したのは風蓮湖,厚岸湖など氷下漁を行う湖沼やサケの死体のある河川だが,これまでほとんど見られなかった道東内陸部にも見られるようになった.内陸部で餌としたのは90年代に急増したエゾシカの死体や狩猟による解体残滓で,鉛中毒発生の原因ともなった.羅臼沿岸では流氷期に運行する観光船が氷上にスケトウダラのアラや雑魚を置くようになり,これに多くのオオワシやオジロワシが集まっている.
【中川 元 斜里町立知床博物館 館長】

◆その他掲載記事
 ・全長,翼長,尾長,嘴峰長,ふ蹠長,体重
 ・羽色
 ・生息環境
 ・巣,卵
 ・渡りと越冬地
 ・食性と採食行動
 ・保護上の課題

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3.◆論文紹介◆ 日本にスズメは何羽いるのか?
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 スズメはもっとも身近でありながら,その割には分かっていないことが多い鳥です.今回私は,そんなスズメの日本における個体数を推定しましたのでご紹介いたします.
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三上修 2008.日本にスズメは何羽いるのか?
Bird Research 4: A19-A29
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○どうやってスズメの個体数を数えるか?
 一口にスズメの個体数を調べるといっても,どのように調べるかはなかなか難しい問題です.当然,日本中のスズメを1羽1羽数えるわけにはいきません.結局のところ「ある一部の場所でスズメの個体数密度を測定し,それを面積の分だけ掛け算する」しかありません.しかし,その基本となる密度をどうやって調べるかは大きな問題です.なぜなら,密度を測定し誤ると,掛け算をする時にその誤りを何倍にも膨らますことになってしまうからです.そこで周囲の研究者に相談しながら,なるべく正確に密度を測定する方法を考えました.
 試行錯誤の結果,道を歩きながら「巣を数える」方法が,一番現実的でかつ安定した精度で密度を計測できることがわかりました.実際には,町中を歩いて調査しても,巣そのものを発見することは多くありません.ですが,ヒナの声や親鳥の餌運びなど手掛かりにして「この屋根のどこかにある」とか,「この家の裏庭のどこかにある」というところまでは絞り込めます.今回はそれで十分ですので,こうやって「巣」を数えていきました.

○地域や環境によって異なる生息密度
 これで密度を測る点については解決しました.次の問題はどこで調査するかです.どこを調査しても計測されるスズメの巣の密度が同じならば,適当な場所を選べば良いわけです.しかし,密度は,地域や環境によって異なることが予測されます.そこで,地域としては秋田県,埼玉県,熊本県と北から南をバランスよくとり,それぞれの県において,住宅地,商用地,農村,ゴルフ場,森林,という5つの異なる環境で調査しました.1地点で調査した面積は500m四方です.
 このようにして調査した結果,巣の密度は環境によって異なっていました.また,どうやら,南の方が北よりも密度が高い傾向があるようです.この理由は,スズメにとって暖かい地方の方が住みやすいからかもしれませんし,寒い地方は気密性の高い家が多くてスズメにとって営巣場所となる隙間が少ないためかもしれません.
 このようにして密度がわかりましたので,次はそれぞれの環境がどれくらいの面積あるのかを調べます.そして,それぞれの環境の面積に先に調べた巣密度をかけあわせることで,日本のスズメの巣の数が推定できます・・・
【三上 修 立教大・院・理(学振特別研究員) 】

◆その他掲載記事
 ・日本全体のスズメの個体数は何羽?

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4.◆活動報告◆ モニ1000集会の報告 国際会議とシギチドリ調査交流会
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○国際会議
 モニタリングサイト1000ではこれまでシギチドリやガンカモの国内での個体数変化を調べてきました.しかし,渡り鳥の生息状況を把握するためには国際的な協力体制を作ることが欠かせません.そこで,ロシア,モンゴル,中国,韓国,台湾,オーストラリア,そして日本から水鳥の調査をしている関係者が集まり,国際連携を考えるための国際会議が1月30日に福岡市で開かれました.
 会議では各国での水鳥の生息状況やモニタリング調査の体制などが紹介され,それに続いて調査地の設置,調査員の人材確保と育成,情報の保管と共有などの課題が話し合われました.さらに,この会議の翌日にはモニタリング調査と国際連携についての公開シンポジウムが開かれました.

○シギチドリ調査交流会
 続いて2月1日には福岡市でシギ・チドリ類調査のモニタリングサイト交流会がJAWAN,WWFジャパン,バードリサーチ,環境省の共催で開かれました.この行事は今年で5回目になりますが,これまでで最高の103名の方に参加していただき,九州,周防灘のシギ・チドリ類をテーマにした口頭発表とポスター発表が行われました.
【神山和夫】

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5.◆図書紹介◆ オオタカの生態と保全
   尾崎研一・遠藤孝一(編著)/日本森林技術協会 税別 2,800円
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 編者らは環境省からの研究費を受け,2004年からオオタカの研究をして来ました.まだどこにも発表されていないものも含むその研究プロジェクトの成果と国内外の最新の研究結果が本書で紹介されています.今までにもオオタカについての報告書がいくつか出されていますが,そのなかでも最もまとまったもので,これを読むことで,オオタカという鳥がどういう鳥なのかが良くわかります.
 2005年12月に改訂されたレッドリストでオオタカは「絶滅危惧Ⅱ類」から「準絶滅危惧種」に変わり,オオタカの保護は転機を迎えています.本書の中では,今までのような個体単位ではなく,個体群単位での保全が良いのではないかというアイディアが出されています.このアイディアを実現するためには解決しなくてはならないことが多くありますし,これに賛成する人も反対する人もいるでしょう.いろいろな人がいろいろなアイディアを出して,転機を迎えているオオタカの保護をより良い方向へ向けることができると良いですね.
 この本の購入したいと考えている方に朗報.オオタカ保護基金で安く購入することができます.送料別で2500円だそうです.希望される方は問い合わせてみてください.
【植田睦之】

◆オオタカ保護基金のページ
http://www.ucatv.ne.jp/~goshawk.sea/hon.html


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バードリサーチニュース Vol.6 No.2   2009年2月24日発行
発行元: 特定非営利活動法人 バードリサーチ
〒183-0034 東京都府中市住吉町1-29-9
発行者: 植田睦之       編集者: 高木憲太郎
E-mail:  URL: http://www.bird-research.jp
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