バードリサーチ ニュース2009年1月号 (Vol.6 No.1)【 もくじ 】 ―――――――――――――――――――――――――――――― 1.◆活動報告◆ カワウ広域管理対策講座 2.◆活動報告◆ ガンカモ調査集会&研究集会 in 伊豆沼 3.◆図書紹介◆ 鳥類の人工孵化と育雛 4.◆研究誌より◆ カルガモの季節移動 5.◆論文紹介◆ 明るさで潜る深さを変えている?夜中にも採食するカワウ 6.◆生態図鑑◆ ハクセキレイ 7.◆学会情報◆ 国際シギ・チドリ類研究会 大会参加報告 ―――――――――――――――――――――――――――――― このページは,ニュースレターの概要版です. 普通会員もしくは賛助会員に入会いただければ, 正式版を閲覧することができます.入会をお待ちしております. 【 概 要 】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 1.◆活動報告◆ カワウ広域管理対策講座 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 近畿地方での広域的な取り組みを少しでも前進させるために,2008年の10月と11月に,「カワウ広域管理対策講座」の企画と講師を務めてきましたので報告します.この講座は,カワウの広域管理に関する普及と関係者間の情報共有を推進する目的で,近畿地方事務所と開催県との共同の主催で開かれました.県の担当者からは,具体的な対策事例を話してほしいという希望が多かったのですが,基本を抑えなければ良い対策につながらないと考え,講義内容を組み立てました.1)生態,2)個体数と分布の変化,3)被害の発生状況,4)各地の対策紹介,5)広域協議会の取り組み,6)管理の考え方です.兵庫県では,県立人と自然の博物館研究員の遠藤菜緒子さんが「兵庫県のカワウの状況」の発表をしてくださいましたが,そのほかの県については私のほうで情報を収集して講座に組み入れました. 10月15日の和歌山市での講座には県や市町村の行政担当者と漁協と猟友会の方の38名が,10月27日の兵庫県神戸市での講座には行政と漁協のほか自然保護団体の方の参加もあり46名が,滋賀県大津市では行政関係者のみで23名の参加がありました.講座の後には,長めの質疑応答時間をとるようにプログラムを設定しました. 「いかにしたら効率的にカワウを駆除できるか」「カワウの増加要因はなにか」「“防除”と“駆除”はどのように考えるべきなのか」などの質問が出ました.講座の終了後には,「カワウっていう奴がようやくわかった気がしてきたよ」と漁協の方から,「管理の考え方が今後の参考になった」と行政の方から声をかけられ,講座が人にもカワウにも少しは役に立ったかもしれないとほっとしました. 協議会や講座を通して,異なる立場や意見の人たちと「顔を見て話し合う」ことが大切だと改めて感じるようになりました.今後は講座形式だけではなく,関係者が意見を言える場を設け,十分に議論ができるワークショップのような企画を進められたらと考えています. 【加藤ななえ】 ◆その他掲載記事 ・カワウの被害と管理 ・カワウの広域管理対策講座 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2.◆活動報告◆ ガンカモ調査集会&研究集会 in 伊豆沼 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 12月13日に宮城県栗原市の伊豆沼・内沼サンクチュアリセンターで,ガンカモ類をテーマにした研究集会を開催しました.時まさに伊豆沼・内沼には5万羽を超えるマガンが集まっており,集会には絶好のシーズンでした. 今回の集会ではガンカモの調査と地域の環境保護活動を絡めた発表が多く,会場にお越しいただいた方々も民間や行政で環境保護活動に関わっている方が多かったようです. ------------------------------------------------------------ 衛星追跡にもとづく陸ガモ類3種の春の渡り経路と移動パターン. 平岡恵美子ほか ------------------------------------------------------------ 東京大学の平岡恵美子さんが発表されたカモ類の衛星追跡では,春の渡りでオナガガモが日本列島沿いに北上するのに対して,マガモとヒドリガモは日本海を越えて渡るルートも存在するということを教えていただきました. もし秋の渡りがこの逆コースであれば,バードリサーチで行っているガンカモの初認調査ではオナガガモは北から順に初認が届くということが予想できます.今期スタートした初認調査でその傾向を捉えたかったのですが,残念ながらまだ報告件数が少なくて細かい飛来パターンが分かりません.来年は飛来順序が分かるようにしたいので,ぜひ皆様の御協力をお願いいたします. ◆ガンカモ類の初認調査のページ http://www.bird-research.jp/1_katsudo/moni1000/gankamo/shonin.html 翌14日の早朝はマガンの飛び立ち観察会にレーダーを持ち込んで,上昇していくマガンの軌跡をレーダーに映して見てみようとしました.しかし,マガンの群はぐるぐる回る変なもの(レーダー)の上空をきれいに避けて飛んでいくので,この試みはあまりうまく行きませんでした.それでも,迫力あるマガンの飛び立ちと,遠くの水面に1羽だけいたハクガンを探して,皆さんには楽しんでいただけたようです. 最後になりますが,会場の便宜を図って下さった嶋田哲郎さん(伊豆沼・内沼環境保全財団),エクスカーションの案内をして下さった池内俊雄さん(雁の里親友の会)と鈴木耕平さん(蕪栗ぬまっこくらぶ),そして集会にお越し下さったすべての皆様にお礼を申し上げます. 【神山和夫】 ◆その他掲載記事 ・大山上池・下池ラムサール湿地登録地・都沢湿地 ・エクスカーション:ラムサールサイトの蕪栗沼と化女沼を訪ねて ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 3.◆図書紹介◆ 鳥類の人工孵化と育雛 山崎亨(監訳)笹野聡美・田上真紀(編)/文永堂出版 税別12,000円 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 文永堂出版からHand-Rearing Birdsの訳本をご寄贈いただきました.飼育法からリハビリ,野外復帰までを日本語で読める貴重な本です.実際にヒナを拾うことはなかなかないでしょうが,アマツバメのヒナは木箱の壁にしがみつかせて育てるとか,なるほどなと思うような飼い方も載っています.高価な本ですが,傷病鳥の野外復帰などに興味のある方はぜひ,見てみると良いと思います. 【植田睦之】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 4.◆研究誌より◆ カルガモの季節移動 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 第 5巻の最初の論文が受理されました.關さんのカルガモの季節移動についての論文です. ------------------------------------------------------------ 關 義和. 2009. カルガモの季節移動について. Bird Research 5: S1-S5. ------------------------------------------------------------ カルガモは本州以南では留鳥です.しかし留鳥といっても意外に季節的に移動しているものです.この論文は一年をとおしてカルガモの個体数をかぞえ,カルガモが季節的に移動していること,そしてその移動パターンが場所によって異なっていることを示したものです.ベランダバードウォッチの結果からも見えてきつつありますが,スズメやカラスといった身近な鳥たちも季節的に移動したり生態を変えたりしているようです. 皆さんも観察の中,鳥たちの意外な側面を発見したら,ぜひ,まとめてみてください. ○ご投稿おまちしております! Bird Researchは皆さんからの論文投稿でつくる研究雑誌です.投稿をお待ちしています.論文をはじめて書く人も大歓迎.論文ならではの書き方というものがあるので,最初は戸惑うこともあると思いますが,論文を書くことは決して難しいことではありません.面白いデータや観察記録をお持ちの方は,お気軽に植田までご相談ください. 【植田睦之】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 5.◆論文紹介◆ 明るさで潜る深さを変えている?夜中にも採食するカワウ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ カワウは水中ではあまり視力が良くないそうです.しかし,グリーンランドのカワウは夜にも採食することが,水深を記録することできるデータロガーを使った研究で明らかになりました(Gremillet 2005).グリーンランドでは真冬になるとほとんど太陽が昇らず,14時から翌朝の8時までは真っ暗になりますが,なんと,この時間帯にもカワウが潜水をしていたことを示す記録が複数の個体につけたロガーから得られたのです. カワウは水中で視力に頼らずに魚を探して食べることができるのでしょうか?Whiteさんたちは,真冬のデータに着目して,夜明け最初の採食(薄明時),その日2回目の採食(昼間),一日の最後の採食(夜)に分けてデータロガーから潜水深度のデータを取り出して分析してみました.すると,昼間は平均12m,最大30mまで潜水するのに対して,夜では平均6m,最大でも15mと浅く,薄明時はその中間でした. そこで,Whiteさんたちはこの他にもいくつかのデータを検証したうえで,カワウは明るさによって潜水深度を変えていることを示しています.そして,視力の弱さにもかかわらず,やはりカワウの採食行動にとって「見る」ということが一番重要だと言っています.しかし,夜,どうやって魚を捕まえているのか,その答えはこの研究でも明らかにされていません.おそらく,遠くから獲物を見つけるのではなく,海底などをくちばしで探って,見つけたら首を一気に伸ばして捕らえているのではないかと,Whiteさんたちは考えています. 日本のカワウも夜に採食することがあるのでしょうか?興味を惹かれる論文でした. 【高木憲太郎】 ◆その他掲載記事 ・カワウの潜水深度 考えられる他の要因ギスカジカ ------------------------------------------------------------ Grémillet, D., Kuntz, G., Gilbert, C., Woakes, A.J., Butler, P.J. & Le Maho, Y. 2005. Cormorants dive through the Polar night. Biol. Lett. 1: 469–471. White, C.R., Butler, P.J., Grémillet, D. & Martin, G.R. 2008. Behavioural strategies of cormorants (Phalacrocoracidae) foraging under challenging light conditions. Ibis 150: 231–239. ------------------------------------------------------------ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 6.◆生態図鑑◆ ハクセキレイ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○英名:White Wagtail 学名:Motacilla alba ○分類:スズメ目 セキレイ科 ○鳴き声 地鳴きはチチン,チチンと聞こえる.囀りは,2パターンあり,チュビー,チュビアーと一声ずつ区切って鳴くシンプルなタイプと,チチン,チチン,ジュイ,ジュイ,ジジジ,ジュイ…などと,だらだらと複雑に鳴くタイプがある. シンプルな鳴き声は,アンテナの上や電線,ビルの屋上など目立つところに止まって鳴く.また,秋冬期なども縄張り争いの際や侵入者が上空を通過したときにもこの声で鳴く.このことから,シンプルな鳴き声は,縄張り誇示の機能があると思われる.一方,複雑な鳴き声は,おもに春先に水辺など地上で採食中に鳴くことが多く,アンテナやビルの屋上など目立つところで鳴くことは少ない.また,この鳴き声は,ハシブトガラスなどが営巣地へ接近したときにモビングの際にも出す.複雑な鳴き声の機能についてはつがい形成などが考えられるが,良くわかっていない. ○生息環境 海岸から内陸の河川,湖沼,農耕地,市街地,工業団地と水辺ばかりでなく乾燥した開けた環境にも幅広く生息し,繁殖している. ○巣 巣は,橋げたや建築物,看板の隙間に作られることが多い.巣材は,枯れ草を外装材に使い,内装材には獣毛や羽毛などを使う.造巣行動は雌雄で行なうが多くはメスが行なう. ○卵 卵は汚白色の地に褐色の斑点があり,長径21.6mm(18.8-26),短径16.1mm(15-17).一腹卵数は4~5卵である. ○ねぐら ハクセキレイは晩夏から翌春にかけて夜間に集団で就塒する.ねぐらは,街路樹や橋げた,ビルの看板の陰などで,秋口には電線なども利用する.多いときには数百羽が集まる.秋口の街路樹などでは,セグロセキレイも一緒に就塒することもあるが,ほとんどの場合,ハクセキレイだけでねぐらを造る. ○分布拡大とセグロセキレイとの種間関係 ハクセキレイは,1970年代以前には北海道や東北地方の北部で繁殖していたが,1970年代中ごろから,その繁殖分布を次第に南下させた.その結果,近縁なセグロセキレイとの繁殖分布が重複するようになり,両者の種間関係が注目されるようになった.栃木県宇都宮市では1976年ごろから繁殖するようになり,おもにセグロセキレイの繁殖密度が低い工業団地や市街地の河川沿い,ビル街などで繁殖し,セグロセキレイの密度の高い郊外の大河川などでは全く繁殖していなかった. 宇都宮市の市街地を流れる川幅約50mの田川では,セグロセキレイとハクセキレイの生息密度が高く,両種の環境利用や種間関係が調査された.その結果,ハクセキレイとセグロセキレイは,冬期および繁殖期とも完全に重複した縄張りを構えていた.しかし,河川に対する依存度は,繁殖期と冬期とも,セグロセキレイに比べて低く,河川の利用時間は繁殖期では1時間あたり平均2.4分,冬期でも1時間あたりオスで平均30.3分,メスで平均36.7分しかなかった. したがって,ハクセキレイは,河川を行動圏の一部として利用するに過ぎなかった.また,地上で歩きながら採食する場合には,セグロセキレイより乾燥した場所をつつく頻度が有意に多かった.繁殖時期は,セグロセキレイより約1ヶ月から1ヶ月半遅く,囀りのピークも遅かった.このような,河川への依存度の違いや採食行動の違い,繁殖時期のずれなどによって,ハクセキレイは新たに分布を広げた地域で同所的に繁殖していると考えられた. 【平野敏明】 ◆その他掲載記事 ・全長,最大翼長,尾長,全嘴峰長,ふ蹠長,体重 ・羽色 ・分布 ・繁殖システム ・抱卵・育雛期間 ・食性と採食行動 ・繁殖分布および繁殖環境の変化 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 7.◆学会情報◆ 国際シギ・チドリ類研究会 大会参加報告 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 国際シギ・チドリ類研究会2008年大会に参加してきました.この会は正式にはInternational Wader Study Groupといい,シギ・チドリ類を研究する熱心なアマチュアとプロからなるフレンドリーな研究会です.2008年大会は,10月3~6日にポーランド北端のグダンスク郊外で開催され,18カ国から122人が参加しました. 大会では,国立オランダ研究所のJutta Leyrerさん達による,過去30年間のカウントデータと気象データを利用した,コオバシギの渡りルートと風条件の解析など,最新技術を利用した発表の他,各地のアマチュア研究者が,渡りのパターンや体調(体重や脂肪の蓄積状態など)と換羽の関係など,標識調査の成果を発表されている姿が印象的でした.ポスター発表では,北京師範大学のYang Hongyanさん達による黄海のコオバシギの食性解析などがあり,私も日本のシギ・チドリ類の減少傾向について発表してきました. ○懇親会とエクスカーション 懇親会では,屋外でたき火を囲んでソーセージを焼いたり,ポーランドの音楽の演奏を聞いたりして楽しみました.トナカイの丸焼きも振る舞われました.エクスカーションではスウォヴィンスキー国立公園に行き,砂丘とバルト海,セグロカモメやカンムリカイツブリなどを観察しました. 次回の年次大会は,2009年9月18~21日,ワッデン海に面したオランダのテクセル(テッセル)島で開催されます.開催地は多様な湿地と干潟が広がる場所で,ヨーロッパのバードウォッチャーの間で有名な探鳥地とのことです. ○国際シギ・チドリ類研究会 国際シギ・チドリ類研究会の会員は,ヨーロッパの人が多いようですが,50か国以上450人を超えています.大会はヨーロッパで年1回開催され,「The Wader Study Group Bulletin」という学術誌が年3回刊行されています.ホームページに詳しい情報があります. 【天野一葉】 ◆International Wader Study Group のホームページ http://www.waderstudygroup.org/res/colourmark/index.html ◆その他掲載記事 ・捕獲技術やミユビシギのワークショップ ・ロシアにおける過去30年間の気温の上昇とシギ・チドリ類の繁殖個体数の減少 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ バードリサーチニュース Vol.6 No.1 2009年1月21日発行 発行元: 特定非営利活動法人 バードリサーチ 〒183-0034 東京都府中市住吉町1-29-9 発行者: 植田睦之 編集者: 高木憲太郎 E-mail: URL: http://www.bird-research.jp ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ もくじに戻る↑ |
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