バードリサーチ ニュース2008年12月号 (Vol.5 No.12)【 もくじ 】 ―――――――――――――――――――――――――――――― 1.◆参加型調査◆ ガンカモ初認調査結果報告 2.◆参加型調査◆ ミヤマガラス初認調査2008〜調査結果報告〜 3.◆研究誌より◆ スズメの生息数、ムジセッカ、そして気象レーダー 4.◆図書紹介◆ 空と森の王者 イヌワシとクマタカ 5.◆生態図鑑◆ ハヤブサ 6.◆会員情報◆ 会員数1000人の大台まであと一歩 ―――――――――――――――――――――――――――――― このページは,ニュースレターの概要版です. 普通会員もしくは賛助会員に入会いただければ, 正式版を閲覧することができます.入会をお待ちしております. 【 概 要 】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 1.◆参加型調査◆ ガンカモ初認調査結果報告 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今年からスタートしたガンカモ初認調査(2008年9月号参照)の11月までの情報を分析してみました.この調査は季節前線ウォッチと同じように,観察者がよく見ている場所でのガンカモ類の初認をホームページから入力していただく調査です.同じ地域から異なる日付の初認が報告されますが,最初の1羽が来た日ではなく,初認のピーク時期,つまりいつ大挙して渡ってくるかや,渡りの期間がどのくらい続くかを調べることが目的ですから,すべての報告が飛来動向の解明に役立ちます.11月末までに全国から222件の初認情報をお寄せいただきました. ○全国のコガモとオナガガモの渡来時期 カモ類のトップを切って渡ってくるのがコガモです.8月末から初認報告が届き始め,9月中旬から10月中旬にかけてたくさんの報告が届いたあと,パタリと報告が途絶えました.このことから,コガモは8月下旬に渡りを開始して,ほとんどの個体が10月中旬までに日本に到達するらしいことが分かります. 報告時期だけを見れば,オナガガモもひと月ほどの期間で渡ってくるようです.こちらはコガモよりスタートが少し遅いものの,9月中旬から10月中旬に報告が集中しています.そして終わりの時期に大きな報告のピークがありました.ただ,報告地点が東日本に偏っているため,西日本での初認時期にも注意する必要があるでしょう. ○初認情報,お待ちしています! 今シーズンの調査でカモ類の参加型初認調査でうまく飛来傾向を調べられそうな目処が立ちました.まだこれから最終まとめを作りますので,初認情報を記録している方は,ぜひホームページから登録をお願いいたします. 【神山和夫】 ■ガンカモ類の初認調査のページ http://www.bird-research.jp/1_katsudo/moni1000/gankamo/shonin.html ◆その他掲載記事 ・関東の種ごとの渡来時期の比較 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2.◆参加型調査◆ ミヤマガラス初認調査2008〜調査結果報告〜 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ミヤマガラスの初認調査へのご協力,ありがとうございます.12月15日までに82件の初認情報が届きました.これは過去4年間の調査で最も多い件数です.皆さんに応援していただいていると思って頑張りたいと思います. ○年々早まる初認時期 全国で最も早い記録は2005年が10月4日,2006年が9月18日,2007年が9月19日でしたが,今年は西日本で9月28日,東日本で10月3日と決して早くはありませんでした.しかし,各地で初認される時期のピークを見てみると,昨年よりも4日ほど早く,2005年に調査を開始してから年々初認時期が早まるという傾向が続いています. ○東日本の方が西日本よりも早く渡来 2006年と同じく,今年も日本海側で早く,太平洋側で遅かったようですが,詳しく見てみるために初認時期の地域間の比較をしてみました. まずは,東日本と西日本の違いです。東日本では10月11〜15日に最初のピークがありますが,西日本のピークは11月1〜5日と,東日本の方が渡来が早かったことがわかりました.2008年の初認情報のピークが昨年以前よりも早かったのは,主に東日本で早くミヤマガラスが渡ってきたことによるようです.東日本と西日本で渡来の時期がはっきりと異なっていたことは,東日本と西日本に渡来しているミヤマガラスの繁殖地が異なっていて,その気候や餌条件の違いが影響したのかもしれない・・・などと,想像が膨らみます.繁殖地と思われる大陸の気温や積雪の状況を2007年以前と比較してみたいと思っています. ○東海、四国、南九州の情報募集! 東海や四国,九州南部の情報が不足しています.もし,ミヤマガラスの初認の情報をお持ちでしたら,下記のホームページからぜひお送りください.ご協力よろしくお願いいたします. 【高木憲太郎】 ■ミヤマガラス初認調査2008のホームページ http://www.bird-research.jp/1_katsudo/miyamagarasu/shonin.html ◆その他掲載記事 ・渡来時期の地域差 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 3.◆研究誌より◆ スズメの生息数、ムジセッカ、そして気象レーダー ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 3本の論文の掲載が決まりましたので,ご紹介します.日本本土に生息するスズメの羽数を推定した論文,ムジセッカの繁殖期の初記録,そして気象レーダーによる渡り鳥調査の可能性についての論文です. ---------------------------------------- 三上修. 日本にスズメは何羽いるのか? Bird Research 4: A19-A29. ---------------------------------------- 三上さんのスズメの論文は日本本土のスズメの生息数を推定したものです.越冬期に給餌にあつまるツル類などを除けば,日本に何羽いるのか分かっている鳥はほとんどいません.三上さんは,環境別の営巣密度をもとにスズメの生息数の推定を試みました.まだまだ粗い推定ではありますが,正確な推定のためには,こういった論文が発表され,それに反論がなされるなど,いろいろな人が興味を持って取り組むようになることが重要です.今後の三上さんの,そしてほかの研究者の研究の発展に期待したいと思います. ---------------------------------------- 松田道生. ムジセッカの繁殖期におけるさえずりの報告. Bird Research 4: S9-S12. ---------------------------------------- 松田さんのムジセッカの報告は,湿地の鳥の録音の際に偶然録音されていた謎の声が,調べてみると日本で初めてのムジセッカの繁殖期の記録だったというものです.この手の鳥は,なかなか姿を目にすることは困難で,姿も似ているので鳴き声が生息の確認の手がかりになります.高音質で録音できる安価なメモリレコーダーの普及により,鳴き声の録音はだれにも身近なものになってきました.今後,この論文がきっかけになって,北海道のムジセッカの繁殖期の記録や,鳴き声による様々な鳥の生息記録の記載が増えるようになるかもしれません. 【植田睦之】 第4巻のその他の掲載論文と要約はWebサイトでご覧ください. http://www.bird-research.jp/1_kenkyu/journal_vol04.html ◆その他掲載記事 ・気象レーダー ウィンドプロファイラに映る「鳥エコー」の実態と渡り研究への応用. ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 4.◆図書紹介◆ 空と森の王者 イヌワシとクマタカ 山ア 亨/サンライズ出版 税込1680円 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ イヌワシやクマタカは観察することさえも難しく,一日待っていてもヒラリと見かけるかどうか.そんな猛禽類を日本での生態がほとんど知られていない頃から追いかけ始めた著者が,34年前のイヌワシとの初めての出会いやさまざまな発見の驚きなどを感情豊かに表現していて,その時の興奮が伝わってきます.また,豊富なイヌワシやクマタカの話は,長年の観察や調査記録をもとにされていて,イヌワシ,クマタカがどのような鳥なのか,彼らを取り巻く森林環境をどのように保全していくべきかということを説明してくれています.調査データの収集が難しく,大型猛禽類の研究は試練の多いテーマですが,それを補ってあまりある魅力があることが,理解できる一冊だと思いました. 【守屋年史】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 5.◆生態図鑑◆ ハヤブサ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○英名:Peregrine Falcon 学名:Falco peregrinus ○分類:タカ目 ハヤブサ科 ○鳴き声 しり上がりに「キーキー」と金属的な甲高い声で鳴くのが一般的な鳴き声である.テリトリー内に侵入した他のハヤブサに対して威嚇する時は,喉が詰ったような声で「カキャッカキャッ」と鳴く.また,幼鳥は巣立ち後一ヶ月ぐらいの間は「ピェーエピェーエ」と頻繁に鳴いて親に餌をねだる.メスはオスに餌をねだるとき,巣立ち幼鳥と似た声で鳴く. ○生息環境 餌となる小型,中型の鳥類が豊富で,営巣場所に利用できる断崖や大岩がある海沿いや河川の流域がおもな生息場所である.さらに,餌が豊富な地域では,人工の構造物(例えば,高圧鉄塔,高層ビル,採石場跡地など)を営巣場所として利用する繁殖事例が近年増えている.冬期には,餌となる鳥類が豊富な干潟や大きな河川の流域などの開けた場所でよくみられ,越冬のために北極圏や寒帯から日本へ渡って来た個体が利用していると考えられる. ○繁殖システム 一夫一妻の繁殖が一般的であるが,まれに一夫二妻の繁殖事例も報告がある.日本で繁殖しているハヤブサは一般的に非繁殖期も雌雄ともに繁殖場所に留まっているので,同一の相手とつがい関係を維持していると考えられる.繁殖は雌雄が役割分担をしながら協力して行なうが,前年に巣立った幼鳥がヘルパーのように繁殖活動に関わった事例も少数ながら報告されている. ○産卵・抱卵・育雛時期 産卵は3月から4月中旬に行なわれるが,北海道では4月の上旬が多い.一腹卵数は通常は3〜4卵で,2卵や5卵の事例も報告されている.平均的な卵の大きさは52×41 mmで,赤味がかった褐色地に暗褐色のまだら模様が入る. 抱卵は主にメスが行ない,オスはメスが餌を食べている間などに抱卵を代わる程度である.本格的な抱卵は30日ほど続き,メスはヒナの孵化後10日ほど抱雛を続ける.その間,オスは狩りをして餌を巣へ運搬するが,ヒナへの給餌はメスが行なう.孵化後2週間ほどすると,メスは巣の付近の高い場所にとまってヒナを見守りながら,オスが餌を運んで来るのを待つようになる.4週間ほどすると,メスも巣場所を離れて狩りに出る.ヒナは孵化後5〜6週間で巣立つ.1巣の巣立ちヒナは1〜4羽で,平均2〜3羽の場合が多い. 巣立ち後3週間ほどはオス親が捕まえて来た餌もメス親が受け取り,幼鳥に与えるが,以後はオス親は空中で直接,幼鳥に餌渡しを行なうようになる.時には,まだ飛べる状態の小鳥を幼鳥の目の前で放すこともある.これは餌渡しと言うよりは,狩りの練習も兼ねていると考えられる. 一般的には,親鳥から餌をもらいながら徐々に狩りの技術を習得し,2ヶ月ほどで分散して行く.しかし,中には12月頃まで親のテリトリー内に居残り,餌をねだる幼鳥もいる.また北海道の営巣地では,翌年の繁殖に入っても(3〜7月)前年に巣立った幼鳥が親のテリトリー内(営巣場所付近)にいて,親鳥から積極的な追い出しを受けないこともある. 【黒澤 隆 噴火湾渡り鳥研究会】 ◆その他掲載記事 ・全長,自然翼長,尾長,露出嘴峰長,ふ蹠長,体重 ・羽色 ・分布 ・食性と採食行動 ・営巣場所 ・全国的なモニタリング体制の確立と法の整備 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 6.◆会員情報◆ 会員数1000人の大台まであと一歩 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■会員情報 バードリサーチの活動へのご協力ありがとうございます. 11月末時点の会員数は928名,1000名の大台も見えてきました.調査協力者として登録していただいた方を含めると2,289名です.都道府県ごとの会員数を5つの段階にわけて,昨年の同時期と比較して,会員数が増えて段階が変わった都道府県は,青森,秋田,宮城,茨城,千葉,広島,山口,佐賀,鹿児島で,東北地方や中国地方,九州地方で会員数が伸びているのは嬉しい傾向です. 今年は毎月の入会者数をグラフにしてみました.2004年の設立後1年間は毎月20名以上の入会がありましたが,その後は,入会者数が10名前後とやや少ない時期と,20名前後の多い時期を繰り返しています.季節的には,春と秋に入会が多く,夏と冬に少ない傾向があるようです.これは,季節前線ウォッチのほか,春のツバメや秋のミヤマガラスの調査など,この時期に参加型の調査を多く実施していることが関係しているのかもしれません. 今後も皆さまと一緒に全国的な鳥の生息状況などを調査していきたいと思いますので,調査へのご参加,ご協力よろしくお願いします. ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ バードリサーチニュース Vol.5 No.11 2008年12月22日発行 発行元: 特定非営利活動法人 バードリサーチ 〒183-0034 東京都府中市住吉町1−29−9 発行者: 植田睦之 編集者: 高木憲太郎 E-mail: URL: http://www.bird-research.jp ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ もくじに戻る↑ |
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