バードリサーチ ニュース2008年11月号 (Vol.5 No.11)【 もくじ 】 ―――――――――――――――――――――――――――――― 1.◆参加型調査◆ オオタカのアンケート調査報告と今年のお願い 2.◆参加型調査◆ 参加型調査へのご協力のお願い 3.◆レポート◆ バイオロギング手法を用いたヨーロッパヒメウ研究 4.◆生態図鑑◆ ケリ 5.◆お知らせ◆ ガンカモ調査集会&研究集会 in 伊豆沼 6.◆図書紹介◆ フライドチキンの恐竜学 ―――――――――――――――――――――――――――――― このページは,ニュースレターの概要版です. 普通会員もしくは賛助会員に入会いただければ, 正式版を閲覧することができます.入会をお待ちしております. 【 概 要 】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 1.◆参加型調査◆ オオタカのアンケート調査報告と今年のお願い ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ バードリサーチは日本オオタカネットワークに協力して一昨年よりオオタカの繁殖状況アンケート調査を行なっています.昨年のアンケート調査では23都府県より138件の回答をいただきました.以下に昨年のアンケートで見えてきた状況をご報告いたします. ○2007年は繁殖成功率が低かった? 2007年の繁殖成功率(繁殖を試みた巣に対するヒナが巣立った巣の割合)を2006年の繁殖成功率と比べてみました.関西は違いがありませんでしたが,それを除くいずれの地域も2007年の方が繁殖成功率が低いことが示されました.しかし繁殖に成功した巣の巣立ちヒナ数については違いがありませんでした.したがって,食物の条件が悪かったというよりは,何らかの理由で繁殖に失敗することが多かったようです. ○アンケート調査へのご協力お願いします! オオタカの2008年の繁殖期も終わり,現在,2008年の繁殖期のアンケート調査を実施しています.北日本および西日本の情報が少ないので,特にそれらの地域の情報をお持ちの方はぜひご協力ください.以下のホームページからの情報の送付,よろしくお願いいたします. 【植田睦之】 ■オオタカアンケート調査 入力ページ http://www.bird-research.jp/goshawk/ ◆その他掲載記事 ・繁殖失敗の原因 ・2007年は繁殖が遅かった? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2.◆参加型調査◆ 参加型調査へのご協力のお願い ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ バードリサーチでは,オオタカのアンケート調査のほか,多数の参加型調査を実施しています.情報をお持ちの方はぜひ,下記の調査にもご参加ください! ■冬鳥ウォッチ 冬鳥(カシラダカ,マヒワ,アトリ,イスカ,ハギマシコ,カワラヒワ)の越冬状況を教えてください. http://www.bird-research.jp/1_katsudo/fuyudori/index.html ■季節前線ウォッチ ツグミとジョウビタキの初認情報をお願いします. http://www.bird-research.jp/1_katsudo/kisetu/index_kisetsu_chosakekka.html ■ミヤマガラス初認調査 ミヤマガラスの初認と渡り飛翔の方向を教えてください. http://www.bird-research.jp/1_katsudo/miyamagarasu/shonin.html ■コサギ調査 コサギの生息状況とその変化の情報をお願いします. http://www.bird-research.jp/1_katsudo/kosagi/index.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 3.◆レポート◆ バイオロギング手法を用いたヨーロッパヒメウ研究 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 私が専ら対象としている海の大型動物は,観察が難しいため,その行動生態に関する研究は陸上動物ほど進んでいない場合が多い.そんな海の動物を調べるために,1980年代より,動物搭載型の小型記録計を用いた調査が盛んに行われるようになった.例えば,圧力センサーによる深度情報を,時系列データとして連続記録できる装置が誕生し,アザラシやクジラ,ペンギンといった海洋動物の潜水能力が次々に明らかになった. 「深度だけ記録して動物の何がわかるというのか?」といった陸上動物研究者の厳しいつっこみを受けつつも,海洋動物達が数百メートルも深く潜り,数十分から1時間以上も息を止めていられるといった事実は人々を驚かせた.直接観察が難しい海洋動物を対象とした潜水行動の研究においてある程度の成果はあがったといえよう. その後,動物搭載型記録計によって得られるパラメータは増え,現在では深度の他にも,温度,地磁気,心電,遊泳速度,加速度,画像などが得られるようになった.潜水行動だけでなく,鳥の飛翔行動や遊泳行動などを,秒単位の時間スケールで把握できるようになった.さらに,世界で一番小さな動物搭載型画像記録計(カメラ)により,動物が餌採りする様子やその周辺環境についても調べられている.ヨーロッパヒメウを対象になされた最新の研究成果を紹介する. ○メイ島におけるヨーロッパヒメウの研究 スコットランドの首都エジンバラが位置する湾の出口にメイ島がある.かつては修道院があったが,現在は国立自然局が管理しており,夏の間数名の海鳥研究者が調査のために滞在している.英国環境研究機構に属する生態水理研究所の研究者によって,過去30年以上の長期間にわたる海鳥調査が継続されている.私は2006年と2008年に記録計片手にメイ島にわたり,野外調査に参加する機会を得た. 共同研究の対象種は,メイ島で繁殖しているヨーロッパヒメウ,オオハシウミガラス,ウミガラスなどであるが,中でも体重2kg弱と最も大型種であるヨーロッパヒメウには加速度計やカメラをつける事ができる.ヨーロッパヒメウは,沿岸の岩礁地帯に繁殖地を設け,繁殖地と周辺海域の餌場とを往復する典型的な Central Place Foragerである. ヨーロッパヒメウの採餌旅行中の行動半径は数キロメートル以上におよぶ.視界の範囲外に飛び去った彼らが,どんな場所で,何を,どれだけ捕獲するのかといった情報を,動物搭載型記録計により入手できるようになった.日本に生息する近縁種のカワウやウミウとは異なり,メイ島のヨーロッパヒメウは,育雛中の成鳥を巣で容易に捕獲することができるため,記録計の装着や回収が可能だ. ○加速度記録から見積もる採餌成功度 ヨーロッパヒメウは餌場まで飛んでいき,何度か潜水を繰り返した後,巣に戻る,あるいは,次の餌場に移動して再び潜水するといったことを1日中繰り返していた.加速度計を用いることで飛行中の羽ばたきによる体の振動を測定できる.1秒間の羽ばたき回数を細かく見ていくと,出かけるときに比べて,帰りの飛行中の方が高い頻度で羽ばたいていることがある.これは餌捕獲によって体重が増加したために,それに見合う分だけ高い頻度で羽ばたいていたものと考えることができる. 理論的な予測に従うと,羽ばたき頻度は体重の平方根に比例する.この理屈にしたがって,各個体の飛行毎の体重推移を計算し,体重変化が獲得餌量に等しいと見なして採餌成功度を推測した.1回の採餌旅行における体重増加は,マイナス30g(餌が捕まらず糞を排出したため体重が減ったと解釈できる)から最大260gまでの値をとった(n=16 個体). この値は,胃内容物を直接採集するやり方で測定された過去の知見(8〜208g)に良く一致する.1回の採餌旅行による獲得餌量は,不思議なことに餌捕りに直接関連すると思われる総潜水時間とは無関係で,総飛行時間と正の相関関係になった.つまり,餌場が巣から近く,短時間しか飛ばない時の獲得餌量は少なく,遠くまで餌採りに出かけるために長時間飛んだ時の獲得餌量が多かったのである. 【佐藤克文 東京大学海洋研究所】 ◆その他掲載記事 ・画像情報から把握する周辺環境 ・意義と展望 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 4.◆生態図鑑◆ ケリ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○英名:Grey-Headed Lapwing 学名:Vanellus cinereus ○分類:チドリ目 チドリ科 ○羽色 雌雄同色.成鳥は頭部から上胸にかけて青灰色で,胸に黒色帯がある.背から上面は灰褐色で腹は白い.初列風切は黒色,次列風切は白色であり,飛翔時に大変目立つ.尾は白色で黒帯がある.足や口元の肉垂と続くアイリングは黄色,虹彩は赤橙色,嘴は基部が黄色で先は黒色である.また翼角部に黒色または淡褐色の翼爪があり,オスの方が大きい傾向にある.若鳥は頭部から上面が薄褐色で,成鳥に見られる頭部の青灰色や胸の黒色帯は無い.また虹彩は赤褐色である. ○分布 中国北東部から東南アジアにかけて分布し,日本では東北地方から西日本にかけて局所的に生息している.1950年代には東北地方と関東北部でのみ繁殖が確認されていたが,1970年代から太平洋側を中心に西日本に繁殖圏を拡大し,近年では九州北部でも繁殖している. ○卵 一腹卵数は1〜5卵で,4卵が最も多い.卵サイズは長径42.0〜51.9mm,短径29.9〜36.6mm,卵重19.2〜43.0g.卵は淡緑色または淡褐色で,全体に暗褐色や黒色の斑が多数ある. ○集団で行う防衛行動 親鳥が捕食者をモビングして巣やヒナを防衛することは多くの種に広く見られる習性である.中でもケリ属は特に激しい防衛行動を行うグループの1つであり,時にテリトリーが隣接する複数のつがいが協力的な防衛集団を形成する.ケリでは,コロニーに捕食者が接近,侵入すると,侵入を受けたつがいを中心にコロニー内の複数のつがいが警戒声を発し,撃退できない場合は捕食者の周囲を旋回飛行する威嚇行動,さらに直接接触のリスクを伴う攻撃行動に発展する.これら集団防衛は最大で16個体が参加することもある. 防衛の集団化には防衛対象の種類と営巣分布様式が影響している.ケリの防衛対象は捕食者となり得る大型鳥類やヘビ類から,脅威となり得ない小型鳥類,さらにヒトまで多種多様であるが,特に猛禽類に対して集団防衛が頻繁に起きていた.また集団防衛は隣接する巣が接近,集中しているコロニーほど多く行われていた.さらに集団防衛は捕食者の撃退に効果的で,防衛に参加する個体数が多いほど確実に捕食者を撃退できた.即ち,ケリはより集中したコロニーを形成することで集団防衛という高い防衛力を得て,捕食者を効果的に撃退していると考えられる. 【高橋雅雄 立教大学大学院理学研究科動物生態研究室】 ◆その他掲載記事 ・全長,自然翼長,尾長,露出嘴峰長,ふ蹠長,翼爪,体重 ・鳴き声 ・生息環境 ・繁殖システム ・巣 ・抱卵・養育期間,巣立ち率 ・非繁殖期の生態 ・人為的影響が大きい繁殖成功 ・繁殖成功に影響を与える要因 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 5.◆お知らせ◆ ガンカモ調査集会&研究集会 in 伊豆沼 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ バードリサーチはモニタリングサイト1000ガンカモ類調査の事務局を担当しています.そこでこの冬,調査に関わる皆さんの活動発表と交流のための集会を開催します.この集会はバードリサーチの会員向け研究集会との共同開催で,ガンカモ調査に参加しているかいないかにかかわらず,どなたでもお越しいただけます. 宮城県の伊豆沼でマガンの越冬数が最も多くなる時期ですので,ガンの飛び立ちをレーダーで観測する試みも見逃せません. 参加ご希望の方は,下記サイトでお申し込み下さい. http://www.bird-research.jp/1_event/gankamo2008.html スケジュール:(詳しくは上記ホームページをご覧ください。) 2008年12月13日(土) 13:05〜16:05 ガンカモ類についての発表 16:05〜17:00 そのほかの発表 18:00〜20:00 懇親会 2008年12月14日(日) 6:30〜 8:00 ガン飛び立ちのレーダー観測 9:00〜12:00 ラムサール登録地(蕪栗沼・化女沼)を見学 会 場: 伊豆沼・内沼サンクチュアリセンター 参加費: 無料 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 6.◆図書紹介◆ フライドチキンの恐竜学 盛口満 著/ソフトバンククリエイティブ 税込1000円 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 生身の鳥なら名前を言えるけど,骨を見たんじゃさっぱり分からない.骨格標本って動かないし,色が付いてないし,おもしろくない.そう思ってホネに興味が持てなかったアナタに絶好の入門書が出ました.この本は著者の盛口満氏が「子どもにホネに興味を持たせるには鳥のホネに恐竜の特徴が残っていることを見せられるといいんじゃないか」と思いつき,そのために彼自身がさまざまな鳥のホネを標本にして鳥の進化を探求した記録が書かれています. 盛口氏の流儀は,すでに分かっている知識でも自分で調べて再発見することです.これは彼が生物教師として生徒の指導してきた教育法であり,また彼自身が生きもの調べを楽しむやり方でもあるようです.別の著作にも,彼の授業では下調べなんかしないで調査を始めて,図鑑を見れば書いてあるはずのことを生徒たちが試行錯誤の果てに自分で発見する様子が書かれていて感動的でした. 発見のプロセスを追体験できることが本書のおもしろさだと思います.皆さんも本書を読むと,自分自身で鶏肉のホネを取り出して「発見」したいという気持ちを抑えられなくなることでしょう. 【神山和夫】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ バードリサーチニュース Vol.5 No.11 2008年11月16日発行 発行元: 特定非営利活動法人 バードリサーチ 〒183-0034 東京都府中市住吉町1−29−9 発行者: 植田睦之 編集者: 高木憲太郎 E-mail: URL: http://www.bird-research.jp ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ もくじに戻る↑ |
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