上のくちばしが折れたトラツグミが飼育下でどうやって餌を食べているのか?
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さくっと見たい。
ムービー ファイル (mpeg)
 1.08MB
[ Movie & Photo by 山口 誠 ]
再生後,6秒目にドックフードを食べます。早業です。


じっくり見たい!
Windows Media オーディオ/ビデオ ファイル
 5.08MB
[ Movie & Photo by 山口 誠 ]
再生後,6秒目と15秒目にドックフードを食べます。
見逃さないでください。

 昨年はトラツグミが保護されてくる事が多かったのですが,その中に1羽,事故で上の嘴が折れてほとんど無くなっている個体がいました.ずっと割餌するしかないのかなあと思っていたら,意外にも自力で採餌し,結構量も食べており元気になりました.しかしさすがに放鳥はできず,個室でオナガと同居することになりました.個室に移した後も普通に餌を食べており,現在まで無事に過ごしています.
 今月のカワウバンディングの時に高木憲太郎さんと病院の鳥について話していた時にこのトラツグミが話題になり,どうやってエサを食べているのか?と言う話になりました.パートの土屋さんは見たことがあるそうで,下の嘴ですくうようにして食べていたと言っていましたが,僕が見ているときには,警戒して餌に近づきません.そこで,高木さんの提案でビデオを仕掛けてみる事にしました.
 その結果,やはり下嘴を使って食べていたのですが,すくうというより軽く刺して放り上げ口に入れるというとてもテクニカルな採餌をしている事がわかりました.餌は5mm角ぐらいに切ったパンや水でふやかしたドックフード・九官鳥の餌で,この時はドックフードを食べていました.トラツグミには大きめですが一口サイズなので丁度良いようです.ただし,失敗することのほうが多く,途中で落ちたり口に入らずまわりにこぼしたりします.その場合多くはおがくずだらけになっても落ちたえさを再び刺したり,すくいあげて食べていました.本来,このようなハンデを負った鳥は自然下では死んでしまうものなのかもしれません.でも飼育下とはいえ自力で餌を取る方法を考えたこの鳥のたくましさのようなものを感じました.

以上, バードリサーチニュース2005年5月号(Vol.2 No.5)より


このトラツグミは事故で上嘴を失いましたが,生まれつき嘴に奇形を持っている小鳥がいます.詳しくは,バードリサーチニュース2005年3月号(Vol.2 No.3)の林吉彦さんのレポート「気になる野鳥のくちばしの奇形」をご覧ください。 【編集担当】