著者紹介

 
雲野 明.1969年,千葉県生まれ.体力とスキー技術のない私にとって,中川での冬の調査は大変でした.時には-10℃以下の気温の中,スキーやスノーシューで数kmの移動はつらかった・・・・.クマゲラが見つからないと気分もブルーに.ヒグマは冬眠中なので心配なかったのですが,大きな角を持った雄ジカが前方に現れた時には,クマスプレーに手がいきました.クマゲラは原生林だけでなく,木材生産の行われている地域にも多く生息していますので,林業との共存に必要なデータを積み上げていきたいと考えています。写真はクマゲラの採餌木と著者。

渡辺朝一.防鳥ネットの問題は,ずいぶん前から知ってはいましたが,あまり積極的に取り組んでいませんでした。しかし,日本野鳥の会茨城県の皆さまが長く問題提起を続けておられるので,少しは力になりたいと思い,調査をしてみました。このような問題は,全国どこでも起こりえることで,多くの皆さまに関心を持っていただきたいと思います。



植田睦之.1970年東京生まれ。北海道でワシの渡りの調査をしていると,次々とハシブトガラスやハシボソガラスが渡っていくのをみて驚きました。今回はその時の記録を論文にまとめてみました。これまで,東京ではカラスは留鳥だと思っていたのですが,「渡り鳥かも」という目で東京のカラスを見てみると,春や秋は数が多いし,高いところを飛んでいる群れもよく見かける。どうも北海道だけでなく,関東でもカラスは渡っているようです。目には映っていても,その気になって見ないとみえないことは多そうです。これからも,そんなことを見つけていきたいと思います。写真は調査データでまとめた秩父のライブ音配信をしている鉄塔に登った時のもの

水田 拓.1970年京都市生まれ。奄美野生生物保護センターの業務の一つに,島内で発見された傷病鳥獣に関するデータ整理があります。今回は,このデータを用いて鳥類の窓ガラスへの衝突事故についてまとめてみました。本論文を公表し,衝突事故の現状を人々に知ってもらうことで,事故の対策をとる気運が島内で高まることになれば…と考えています。写真は衝突事故の多い観光施設で子供たちとバードセーバー作りを行なったときのもの。

阿部優子.所属しているのは哺乳類の研究会(通称「あほけん」)ですが,奄美の哺乳類は夜行性で,なかなか姿を目にすることはありません。野鳥は身近にいろいろな種類を観察できることが奄美では魅力です。一方で,傷病鳥として持ち込まれる数はかなりおり,その多くは死んでしまう悲しい現実があります。死体からできるだけ多くの情報を集め,野鳥の生態解明や事故防止につながればいいなと思って解剖しています。

関 伸一.1971年静岡生まれ。トカラ列島をフィールドに研究をはじめて十数年、その中でも長年あこがれていた臥蛇島・上ノ根島・横当島の3つの無人島を、やっと訪れることができました。悪天候で二転三転する計画、自転車操業の資金繰り、多くの方のご協力なしにはたどり着けない遠い道のり、なのに何故、ヒトは無人島にあこがれるのでしょう?「見た事のない何かがありそうな気がするから」と表現した方がいましたが、確かにそうかもしれません。今も次の無人島を目指して、琵琶湖で日々トレーニングに励んでいます。
籠島恵介.1963年東京都生まれ。転勤族で,千葉,長崎,岡山,名古屋,そして沖縄と異動しております。沖縄に来て,メジロの盗蜜行動の面白さに気がつきました。
通年で調査すると植物も虫もメジロもダイナミックに変わっていくのがよくわかります。
いつ転勤になるかわかりませんが,今後も沖縄のメジロを見続けたいと思っています。
福田道雄.かつて,東京・上野の不忍池はオナガガモで埋め尽くされるような時期がありました。その頃(私には上野動物園飼育課勤務時代)の古い調査結果を論文に書き上げました。食べ物と安全がかなり確保されていた不忍池に飛来したオナガガモは,池の利用形態が滞在型と中継型にうまく分けられるのではないかと期待して,この調査を行いました。しかし,調査結果では,多くの個体が断続的に飛来していたということになりました。写真は当時の不忍池上野動物園園内部の早朝風景(中央にあるのは給餌用桟橋)。

藤井忠志.1955年,秋田県大館市生まれ。サンコウチョウの不思議な生態にひかれて,ついついはまってしまいました。専門は,本州産クマゲラ個体群の生態研究。本州のブナの森にひっそりと生息するクマゲラを追いかけて30年になります。小笠原ロ秋田大学教授に師事し,故・泉祐一氏からがっちりと調査手ほどきを受けました。主なフィールドは,秋田県森吉山と青森県の白神山地,そして岩手県側のブナ林。11月18日,友人のコウモリ研究者が私のフィールドで滑落し亡くなり,非常に落ち込んでいます。写真は,森吉山のクマゲラ雌ねぐら木(倒木)で,本州産クマゲラ研究会調査メンバーと(一番左が著者、左から二番目が顧問の根深誠氏)。本州産クマゲラ研究会代表。

平野敏明.バードリサーチ研究員。本研究の聞き取りを通して、季節の移ろいの早さを感じることができました。ある朝急にコマドリの囀りが聞かれたかと思うと、数日後にはコルリに変わったりと鳥たちの動きが手に取るように分かりました。さらには、アカショウビンの声が思いのほか騒々しいことも新たな発見でした。便利な世の中になったことを改めて実感する調査でした。

黒沢令子.年々、野外での鳥の観察も億劫になってきていた昨今、パソコンを通じて鳥の声を聞き取る室内調査をするという企画に声かけてもらいました。北国 ではまだ寒い春の朝でもストーブにあたりながらできるなんて楽な調査があるのなら、と始めてみました。朝は夜明け前に起きる生活も、季節を通して 鳥の声の移り変わりがわかってくると、実に面白く行えました。おかげで早寝早起きの習慣が身につきましたが、終わってもしばらくはアカハラがさえ ずっているような幻聴が続いて驚きました。
斎藤馨(さいとうかおる).1955年新潟県生まれ。インターネット先にある本物の森林:サイバーフォレストの運用を進めています。( http://cyberforest.nenv.k.u-tokyo.ac.jp
 東京大学秩父演習林内に設置した2台の森林映像記録ロボットカメラでは映像と音声による記録を行っています。2010年に衛星ネットワーク接続を導入して,早朝の森の音をライブ公開配信しながら録音ファイルも公開するシステムの開発と運用を進めています。リアルタイムで聞くのは思ったよりも楽しいことが分かりました。録音アーカイブよりもライブで森の音を聞くこと自体こんなにおもしろいとは想像以上です。そして鳥のセンサスとしても使ってもらえるようです。まだ開発途中のシステムですが,安定して長期に運用できることと,いろいろな自然地の音を配信・録音・公開していくつもりです。