著者紹介
三上 修
.その日は9月の第一土曜日でした。天気の良い日でした。妻と、秩父にある低い山を登り終え、下りの途、木組みの階段を降りているときでした。考えていました。「バードリサーチの著者紹介用の写真を撮らないといけなかった。どっか景色のいい背景を探さなくては」と。そのときでした。苔むした木組みの部分に、靴の踵の部分がのり、ツルッと滑ったのは。のちになって妻いわく、「横滑りになって体が完全に中に浮いていた」。
変な姿勢で着地すると同時に、聞きたくない音が体の芯にまで響いて、左手に何が起きたか教えてくれました。さすがに、直後は、そんな余裕はありませんでしたが、手ごろな添え木を拾って手ぬぐいでしばりつけ、下山する途中には、ひらめきました。「ここで写真を撮っておかねばっ!」と。「こんな面白い写真は、ほかにないっ!」と。というわけで、撮ったのがこの写真です。左手に添え木を付けて、その添え木を右手で支えているところです(そうしないと痛いのです)。痛みで顔がひきつっているのが良くわかります。低い山だからと言って油断してはいけませんね。皆様もお気をつけ下さい。幸いなことに左手です。骨折しているので全治3ヶ月ですが、冬の調査までには完治するはずです。
植田睦之
.1970年東京生まれ。今回は,気象レーダーとスポットセンサスの方法についての論文を書きました。気象レーダーは前巻で,その渡り鳥調査への有効性についての論文を書きましたが,今回はそれにより見える渡り鳥の状況についてまとめることができました。次は,渡りと気象の関係についてまとめるのが目標です。スポットセンサスの手法検討は環境省のモニタリングサイト1000の調査員の皆さんから,当時採用されていたラインセンサスに対する苦情が多かったことがきっかけで始めました。調査の結果からスポットセンサスの有効性が確認でき,現在スポットセンサスで調査をはじめているのですが,今度は,「止まって調査していると蛭が集まってきて困る」とか「立ち止っていると寒さが身にしみる」とか別の苦情がよせられるようになりました。はてさて,今度はどうしましょう?
写真は,伊豆沼で捕獲したカモを運んでいるところ。
樋口広芳
.鳥の渡り衛星追跡に20年ほどかかわってきた。いろいろ興味深い成果があがり、とてもうれしく思っているが、現在、いくつか新しい追跡の試みにかかわっている。これまで対象にならなかった鳥で試みるべく、関係者と知恵を出し合っている。レーダーの利用にも非常に関心がある。今回の論文で扱っている研究内容は、今後さらに重要性を増すものと思われる。
写真は、アラスカ・ユーコンデルタにて2008年7月撮影。
關 義和
.東京農工大学大学院に所属しています。タヌキなどの中型哺乳類を中心に研究を行なっています。以前は,山梨県にある帝京科学大学にいました。当大学には,野生生物研究部というものがあり,2003年10月から大野調整池において水鳥の調査を始めました。調査の結果,冬に観察されなかったカルガモが春から夏にかけては観察され,それが今回の研究のきっかけとなりました。まだまだ調査量等十分ではないため,推測の域をでないことが多いですが,全国各地で同じような調査が行なわれれば,カルガモの季節移動について明らかにされていくと思っています。
写真は,栃木県奥日光にて。
写真左が藤本,右が嶋田
嶋田哲郎
.1969年生まれ。異分野の研究者との共同研究は仕事の幅を広げます。今回,淡水魚が専門の藤本博士研究員によるオオクチバス調査があったからこそ,この論文を書くことができました.今後も異分野交流をどんどんやりたいと思います。
藤本泰文
.1975年生まれ。これまで1,000個体以上のバスを分析してきましたが,鳥の捕食は初めての経験でした。地道に続けてきた調査により,貴重な報告ができました。今取り組んでいる外来魚駆除が,水鳥の保全にも貢献することを,将来報告できればと思っています。
平野敏明
.バードリサーチ研究員。多くの時間を渡良瀬遊水地でクイナ類をはじめとする湿地性の鳥の生息状況を調べるとともに,宇都宮市の数か所で定期的にセンサスをしています。今回の調査で,スポットセンサスの有効性が実証されましたが,本人はまだまだラインセンサス派。それでも,最近は歳のせいかめっきり疲れやすくなり,何時スポットセンサスに乗り換えようかと悩んでいる今日この頃です。
今森達也
.1968年石川県生まれ。石川県在住。幼いころ、自宅裏の城址公園で飼われていた近くの山で拾われたイヌワを見て,「山に帰してあげたいな」と思ったのが鳥に興味を持つきっかけでした。現在は石川県を中心に猛禽類の生息分布状況や繁殖状況を調べていますが,最近特に気になっているのが積雪量の激減です。雪が多かった北陸地方でこれだけ積雪量や積雪期間が減ってしまえば,鳥たちの分布や繁殖時期なども変わってくるのではないでしょうか。多くの方々と協力して,鳥たちの将来を見守っていきたいと思っています。
写真左が佐藤,右が高木
高木憲太郎
.1977年東京都生まれ。大学院でハシボソガラスの研究をしていたことからか,黒い鳥つながりで就職後はカワウのプロジェクト全般を担当して,各種調査やシンポジウムの開催,コロニーの管理や広域連携による保護管理の推進などに関わってきました。衛星追跡の調査ではカワウを捕獲して送信機を装着するのですが,この捕獲がなんとも難しくなんどもハラハラしました。捕獲してみると個性豊かで,たくましく反撃してくるやつから,おとなしい子まで。弥富野鳥園で捕獲した1羽のメスは,目がくりっとしていてとても可愛い子でした。彼女らの負担を減らすために,処置の時間を短くしたり,体温の管理など工夫を積み重ねてきました。その一つに装着方法を変えることも検討したので,その結果を論文にまとめました。
佐藤達夫
.千葉県市川市の行徳野鳥観察舎で働いています。主に県内各地から保護収容される傷病鳥の世話や保護区内での湿地環境等の管理作業,標識調査などを行なっています。保護区内の浅い池はほっとくとアシやヒメガマの原っぱになってしまいます。開けた湿地環境を好むシギ・チドリやサギ類,カモ類を誘致するため草との戦いはすでに始まっています…(泣)。
黒沢令子
.鄙の地に引っ込んで,小さなキッチンガーデンを始めました。青々と茂った小松菜に白い蝶々が来たら,あっという間に丸坊主になりました。葉についた青虫が大きくなり,壁をよじ登っていったと思ったら,なんと黄色い卵様の物を産みました!「芋虫が卵を産んだ?これは世紀の大発見」と思い,友人に問い合わせてみたら,「オオモンシロチョウの幼虫に寄生蜂がついていて,それが蛹化したのでは?」と教えられ,とんだ都会人ぶりに苦笑いしています。
写真は、北大の送別会にて、友人のお子さんと一緒に。。