プロジェクト紹介

飛翔性昆虫ウォッチ


調査の目的


 日本では、夏鳥が減少しています。留鳥と比べて減少度合いが大きいことから、越冬地の環境の悪化が影響しているのではないかと言われていますが、もう1つこれらの鳥たちに特徴的なこととして、飛翔性の虫を食べていることが多いことがあります。ヒタキ類しかり、サンショウクイしかり、ヨタカしかりです。それに対して留鳥はカラ類やホオジロ類などイモムシなどへの依存度が高いように思います。

 以前、山でキャンプをすると、街路灯にあつまる無数の虫がコッヘルに飛び込んできて、食事に苦労しました。しかし、最近はそうでもないように感じます。また、網戸に集まってくる虫も激減しているように感じます。これらの虫の減少が夏鳥の減少の一因になっているのではないでしょうか? しかし、残念ながら、こういったデータは残されていません。そこで、今後の虫の変化を評価するための基礎データを得るために飛翔性昆虫ウォッチをはじめたいと考えました。

2005年と2006年の調査試行の結果


 飛翔性昆虫のモニタリング手法として2つの方法を考えました。1つは原付(50ccのバイク)に捕虫網を装着し、走りながら虫をサンプリングする「原付トラップ」。もう1つは自動販売機の光に夜に集まってくる虫をかぞえる「自動販売機トラップ」です。

 原付トラップの方は、まだ試行中で、使えるかどうかわからないのですが、自動販売機トラップは、なかなか興味深い結果が得られました。毎月1回3~4日かけて自動販売機に集まってくる虫を小さい虫、中くらいの虫(1cm前後)、大きい虫(2cm以上)に分けてかぞえてみたのですが、春先の4月、5月は、川の周囲に虫が多く、季節の進行に伴って、内陸部との差があまりなくなっていくのがわかりました。また、便宜的に、中くらいの虫を小さい虫5匹分、大きい虫を10匹分として、昆虫量の季節変化をみてみると、5月、6月に虫が増加し、7月、8月は再び減少しているのがわかりました。そして飛翔性昆虫を主要な食物としているツバメの飛来時期は春期の飛翔性昆虫量の多い地域ほど早いことがわかりました。詳細はこちらの論文をご覧ください。

今後の計画


 自動販売機トラップが飛翔性昆虫のモニタリング手法として使えそうなのがわかったので、2007年からは全国に調査地を設定して、モニタリングを開始ます。調査方法のページをご覧になって,ぜひご参加ください。その後は5年に一度程度の頻度で調査をくりかえして現状を把握していきたいと考えています。
また、「原付トラップ」の試行も続け、昼行性の飛翔性昆虫のモニタリングも目指します。


2005年の試行調査の4月、6月、8月の結果。
4月は川沿いに虫が多く、その後内陸部も虫が多くなっていくのがわかる。